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歴史あるわが国独自の森田療法と認知行動療法との異同と展望は?

No.5227 (2024年06月29日発行) P.48

芦澤 健 (資生会千歳病院院長)

舘野 歩 (東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授)

登録日: 2024-06-28

最終更新日: 2024-06-25

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  • 歴史あるわが国独自の森田療法と世界で汎用されている認知行動療法は,病態の理解(とらわれ,認知の歪み)と行動による治療をする点で共通点がありますが,違いもあります。認知行動療法の第3世代と呼ばれるマインドフルネスやアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)等に言及しながら,認知行動療法と森田療法との異同と森田療法の展望についてご教示下さい。
    東京慈恵会医科大学・舘野 歩先生にご解説をお願いします。

    【質問者】芦澤 健 資生会千歳病院院長


    【回答】

    【認知行動療法と森田療法はマインドフルネスを鍵に近づいている】

    森田療法とは,1919年に東京慈恵会医科大学精神医学講座初代教授・森田正馬が創設した神経症性障害に対する精神療法です。

    森田療法では症状への「とらわれ」を起こしていると理解します。症状に「とらわれる」機制は,症状のことにばかり注意が向いてしまう「精神交互作用」と,「現実の自己」と「理想の自己」とのギャップに悩む「思想の矛盾」から成り立ちます。森田療法では神経症性障害の根底にある不安を病的なものととらえず,「生の欲望(欲求)」が過大だから不安が起こると理解します。不安を排除せずそのままにして,不安の裏側にある「生の欲望(欲求)」を発揮することが治療目標で,これを「あるがまま」と呼びます。

    症状の悪循環を同定する点は,認知行動療法のケース・フォーミュレーションとほぼ同じですが,介入方法が異なります。認知行動療法では症状の悪循環の背後にある自動思考を同定し,その深い思考内容(スキーマ)の修正を図ります。一方,1990年代になりアクセプタンスやマインドフルネスといった,東洋的技法を用いて認知の内容を変化させず文脈を変化させる第3世代の認知行動療法が台頭してきました。マインドフルネスとは,日々の心配事や不安な気持ち,仕事や他人からの評価など,つい頭に浮かんでしまうことを鎮め,今だけに集中できるような精神状態を意識的につくることで,その手法として瞑想が用いられています。

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