非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の診断概念は,2020年のガイドラインでは「NAFLDは,主にメタボリックシンドロームに関連する諸因子とともに,組織診断あるいは画像診断にて脂肪肝を認めた病態である。アルコール性肝障害,ウイルス性肝疾患,薬物性肝障害など他の肝疾患は除外する。NAFLDは,病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL,以前の単純性脂肪肝)と進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分類される」と定義された1)。
しかし2023年,NAFLDは非飲酒者の脂肪性肝疾患全体を含む概念で病因・治療と関連していないことから,海外の3つの学会から新たな名称・分類が提案された。新しい疾患名としてMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)という概念が提唱され,これは5つの心代謝系危険因子の少なくとも1つを満たす脂肪肝として定義された。さらに様々な病因の脂肪性肝疾患を包括するSLD(steatotic liver disease)という疾患名称と,いわゆる中間飲酒群の脂肪肝を表すMetALDという疾患分類・名称も提案された。
健診などで脂肪肝を認めた場合,薬剤摂取歴・飲酒歴・ウイルスマーカー・自己抗体・画像検査より他の肝疾患を除外し,NAFLDの診断を行う。また,NAFLDの予後には肝臓の線維化の有無が最も重要な所見であるため,肝線維化(血小板数20万/mm3未満,FIB-4 index 1.3以上,線維化マーカーの上昇のいずれかを認める場合)が疑われる場合,エラストグラフィー(transient elastography,MR elastographyなど)または肝生検を行い,肝臓の線維化を把握し,follow up,治療につなげるべきである。
NAFLDは生命予後が低下するため,NAFLD全体を治療対象とすることが大切である。治療の基本は減量と食事・運動療法,生活習慣の是正である。しかし,生活習慣がなかなか改善できない例や,NASHは肝硬変に進展し肝細胞癌発生の可能性もあるため,積極的な薬物療法(NASHの薬物療法は「非アルコール性脂肪肝炎」の稿参照)も考慮すべきである。
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