大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)は,骨盤と大腿骨の接合部で生じる疾患であり,スポーツ活動に従事する人に多い。この疾患は,寛骨臼(骨盤側)や大腿骨頭(大腿骨側)の形状の変化によって引き起こされる。
FAIの主要な病態は,寛骨臼形状異常(Pincer型)や大腿骨頭形状膨隆などの変化(Cam型)による股関節の異常な摩擦によって,炎症,さらに関節唇損傷および軟骨の損傷を引き起こし,長期的には変形性股関節症に進行する可能性が高い病態である。
FAIは股関節周辺の疾患で,特に若い成人に多い。この疾患を診断するためには,以下のポイントに注意を払う。
患者の主訴は通常,股関節周辺の痛みや違和感である。特に腰や太ももの付け根で痛みを感じることがある。また,股関節の可動域制限,腰部や体幹の筋力低下もみられる。
特定の臨床検査,たとえば股関節の屈曲や外転時に痛みが誘発されることがある。そのため,症候性の股関節痛や鼠径部痛を訴え,関節可動域制限,FABER(flexion abduction external rotation)testとFADIR(flexion adduction internal rotation)testが陽性の場合,FAIと診断される。
単純X線,MRI,CTスキャンなどの画像診断を用いて,股関節の形態や異常を評価する。FAIは大腿骨と寛骨臼の異常な形態に起因することが多く,これらの異常を確認することが重要である。
日本股関節学会が提唱した診断指針1)では画像診断を重要視している。
X線学的な診断としては,Pincer型とCam型にわかれる。
①CE(center edge)角40°以上,②CE角30°以上かつARO(acetabular roof obliquity)0°以下,③CE角25°以上かつcross-over sign陽性が挙げられている。CE角25°未満の症例は寛骨臼形成不全として除外する。
主項目α角55°以上,副項目head-neck offset ratio(0.14未満),pistol grip変形,herniation pitのうち主項目を含む2項目以上の所見を有する。
MRIにおける関節唇の評価には,T2*強調像で関節唇に垂直にスライスする放射状が最も適している。正常な股関節唇は全体に低信号な三角形の形状を示すとされる。なお,股関節唇の高信号は加齢とともに増加することが知られており,身体所見と照らし合わせて診断することが必要である。
手術時に高度な軟骨損傷がある場合には,術後成績が不良であるため,術前に可能な限りMR検査で軟骨損傷を予知する必要がある。筆者は3T MRIの脂肪抑制プロトン密度強調像とMRI T2マッピングを用いて軟骨損傷を評価するよう努めている。
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