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【識者の眼】「かかりつけ医機能報告制度が意味するものとは?(前)」草場鉄周

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2024-07-29

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7月19日に開催された「第8回かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」にて、これまでの議論の整理が公表された。昨年11月から議論の焦点となってきた報告すべき内容については、大きくは1号機能(診療内容)、2号機能(診療体制)にわかれ、1号機能では「かかりつけ医機能に関する研修修了者の有無、総合診療専門医の有無」と「17の診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること(一次診療を行うことができる疾患も報告する)、医療に関する患者からの相談に応じることができること」が主に含まれ、2号機能では「通常の診療時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護サービス等と連携した医療提供」が含まれた。

プライマリ・ケアを専門とする立場から見ると、「一次診療を行うことができる疾患」については、「患者調査による推計外来患者数が多い傷病を基に検討して設定」すると説明されており、例示された40疾患の案はまさにコモンディジーズそのものであり、プライマリ・ケアにおける包括的ケアを示すと言ってよい。他にも、2号機能はプライマリ・ケアにおける近接性、継続性、協調性(連携機能)に重なる内容であり、その他の報告機能にある健診、予防接種、地域活動もプライマリ・ケアの重要な要素である。そして何より、1号機能で〈総合診療専門医の有無〉が問われていること自体、かかりつけ医機能を体現する専門医が総合診療専門医であり、かかりつけ医機能が総合診療やプライマリ・ケアと同義であることを暗に示していると考えてもよいだろう。

つまり、今までは在宅医療というレンズでしか見えなかった日本のプライマリ・ケアの実態が、本制度を通じて外来診療も含めて全国各地で透明化されるのである。また、公表された情報に基づいて地域のかかりつけ医機能を強化するための協議の場も設けられる予定であり、都道府県の医療計画や現在議論されている〈新しい地域医療構想〉にもかかりつけ医機能が組み込まれることとなっている。その意味では、日本で初めて医療政策の柱にかかりつけ医機能という表現でプライマリ・ケアが組み込まれる方針が明示されたことは非常に意義深い。1980年代の家庭医構想から実に40年のときを経てようやく日本の医療が変わろうとしていることを実感する。

次回、後編では、かかりつけ医機能を支える総合診療専門医の役割やかかりつけ医機能に関する研修が今後の医師養成に与える影響を概説していきたい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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