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溶血性レンサ球菌感染症(小児)[私の治療]

No.5242 (2024年10月12日発行) P.48

中野栄治 (帝京大学医学部附属溝口病院小児科講師)

登録日: 2024-10-15

最終更新日: 2024-10-08

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  • 溶血性レンサ球菌はグラム陽性球菌であり,血液寒天培地における溶血性と細胞壁多糖体抗原に対する抗原性(Lancefild分類)により各群に分類される。小児科領域ではA群β溶血性レンサ球菌(group A Streptococcus:GAS)およびB群β溶血性レンサ球菌(group B Streptococcus:GBS)による感染が主である。GASは咽頭,皮膚など,GBSは腟や直腸,膀胱などで健康人にも常在する。
    GASによる感染の代表的なものとして,咽頭炎,伝染性膿痂疹,猩紅熱などがある。感染性続発症として扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍,化膿性頸部リンパ節などがあり,非感染性続発症としては急性糸球体腎炎やリウマチ熱,溶連菌感染後反応性関節炎などがある。一部の劇症型溶血性レンサ球菌感染症では急速に進行し,致死的な経過をたどる。近年,報告数が増加しているため注意が必要である。
    GBSは新生児期や早期乳児期の髄膜炎および敗血症の起因菌として重要であり,予後不良な感染症のひとつである。日齢0~6に発症する早発型感染と日齢7~89に発症する遅発型感染,さらに日齢90以降に発症する超遅発型感染に区別される。分娩時の母体への抗菌薬投与が行われるようになり,早発型感染は減少傾向にあるとされるが,遅発型や超遅発型感染はむしろ増加傾向にある。

    ▶診断のポイント

    GAS咽頭炎は5歳をピークに9歳以下が80%以上を占める。典型的な症状は,発熱および嚥下痛を伴う咽頭痛であり,全身倦怠感や頭痛,嘔気・嘔吐,腹痛などの症状を伴うこともある。咽頭所見では軟口蓋が全般的に発赤し,点状出血または粘膜下出血を認める。また扁桃は発赤・腫大を認め,しばしば白苔を伴う。頸部リンパ節の腫脹・圧痛も高頻度に認める。猩紅熱では咽頭・扁桃炎の症状よりやや遅れて,淡紅色の点状小丘疹様の発赤が出現し体幹から四肢に広がる。これらの年長児で認める典型的な症状は,3歳未満では認めないことが多い。GAS咽頭炎の診断は迅速検査で行われ,咽頭培養と比較した場合の感度は約86%,特異度は約95%である。

    皮膚感染症では,周囲に発赤を伴う膿疱が出現し急速に痂皮化する痂皮性膿痂疹を発症する。また,丹毒や蜂窩織炎などの真皮・皮下脂肪組織における感染の原因にもなる。診断は局所の培養からの検出による。

    GBS感染症は髄膜炎・敗血症の原因となり,診断を確定するには培養検査によるGBSの分離が,現時点での唯一の方法と考えてよい。特に早発型や遅発型感染にあたる3カ月未満のGBS感染症では,髄膜炎や敗血症の割合が高く,早期の診断確定が必要である。

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