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医療費抑制は「財政再建の本丸」 - 経済財政諮問会議議員の伊藤氏が強調 [日医医療政策シンポ]

No.4742 (2015年03月14日発行) P.7

登録日: 2015-03-14

最終更新日: 2016-11-18

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【概要】日医が主催する医療政策シンポが5日に開催された。政府の経済財政諮問会議の民間議員を務める伊藤元重氏が講演し、「医療費抑制は財政再建の本丸」と強調した。

日本医師会が主催する2014年度の医療政策シンポジウムが5日、開催された。今年度のテーマは「少子高齢化時代を乗り切れるか─医療・介護の挑戦」。横倉義武日医会長、自民党の武見敬三参議院議員、経済学者の伊藤元重東大教授、神野直彦東大名誉教授の4人が講演した。
政府の経済財政諮問会議で民間議員を務める伊藤氏は「財政から見た日本の医療」と題した講演の中で、政府が掲げる2020年度の基礎的財政収支(PB)の黒字化という目標達成の重要性を強調、社会保障費抑制につながる改革の必要性を訴えた。

●「20年度のPB黒字化に向けた改革重要」
伊藤氏は政府の債務残高が1000兆円を超える現状を説明した上で、年々増大する医療や介護など社会保障費の抑制を「財政再建の本丸」と指摘。政府が中長期的な国家財政を考える際の最優先事項になっているとの認識を示した。医療制度改革についても「2025年を目指していては政府が重視する20年度のPB黒字化には到底間に合わない」とした上で、「歳入歳出の見直しを20年度までの時間軸で捉え、社会保障改革の議論をしないといけない」と指摘。制度改革の短期目標を設定する必要性を強調した。
また、伊藤氏は「限られた条件の中ではすべてを叶えることは難しく、医療にも『トレードオフ』の考え方が重要」と指摘。①コスト、②質、③アクセス─の3つを要素に挙げ、「いずれかを多少犠牲にする必要があるのではないか」との考えを示した。
一方、伊藤氏と同じ経済学者の神野氏は、福祉国家スウェーデンの社会保障における「悲しみの分かち合い」の概念を紹介。社会保障の本質は「誰もが不幸にならないようにすること」とした上で、「医療制度改革は悲しみを分かち合える制度にするためのもの。医療費抑制は結果であって、改革の目的であってはならない」と訴えた。

●「医療サービス向上には税負担引上げを」
講演に続き4人が参加したパネルディスカッションでは中川俊男日医副会長が司会を務めた。
財政と医療費の関係を巡っては、伊藤氏がPB黒字化の重要性を改めて強調し、「医療全体のシステムを改革する必要がある」と述べた。これを受け、神野氏はPBが黒字ながら財政危機に陥ったイタリアのケースから「PB黒字化にはあまり意味がない」と指摘。「赤字が増え続けることは問題」とした上で、「医療サービスを充実させるには税負担を上げることが正しい」との考えを示した。
横倉会長もこれに賛同。「財政悪化の原因は必要な税金を取っていないこと」との考えを示し、消費税率引上げが見送られたことを問題視した。武見氏はPBの黒字化は重要としつつ、「政治は社会のニーズを踏まえて方向性を決める必要がある」と指摘。税以外にも積立方式による社会保障財源の確保や健康保険料の格差是正が必要とした。

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