社会保障審議会医療保険部会は11月28日、医師偏在是正対策の厚生労働省案について議論した。中でも「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」における対策の財源に保険者からの拠出を充てることや、診療報酬上の対応で地域間・診療科間の偏在是正を図る案には慎重論や反対意見が多かった。
厚労省は11月20日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」に(1)「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」(重点支援区域)の設定、(2)医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象施設拡大と勤務経験年数の延長、(3)「外来医師過多区域」(外来医師数がきわめて多い地域)における新規開業規制の強化―などを柱とする医師偏在是正対策案を提示。
このうち重点支援区域は、へき地以外の医師確保が特に必要な地域を対象に選定。当該区域において、①医療機関への医師派遣について派遣先と派遣元の双方に経済支援を行う、②地域間・診療科間偏在是正のための診療報酬上の対応、③特定の地域を対象に診療報酬での措置を講じた場合は患者負担が過度に増加することのないよう保険者からの拠出を求める―などの経済的インセンティブを導入することを検討課題に位置付けた。
重点支援区域への支援の財源に保険者からの拠出を充てる案には、「まずは国や行政の責任で対応すべきだ」(佐野雅宏委員・健康保険組合連合会会長代理)、「保険給付と関連性の乏しい使途に保険料を充てることに国民の理解を得るのは難しい」(藤井隆太委員・日本商工会議所社会保障専門委員会委員)など、保険者関係の委員の多くが異議を唱えた。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は診療報酬で偏在是正を図るとする案を「あり得ない」と非難。2025年度のかかりつけ医療機能報告の導入を契機に医師や医療機関が連携を強化し、地域の医療を面で支えていくための取り組みが始まることから、「医師数だけを見て決めた対応は今後、現実に沿わないものになる。その点をしっかり理解して議論すべきだ」と指摘した。一方、保険者関係の委員は、仮に診療報酬で対応する場合は医師数の多寡によってメリハリをつけるなど、財政中立を原則に制度設計すべきだと主張した。