ある学会から頂いた指定演題のテーマが臨床研究の仕方ではなく、論文の書き方でもなく「これまでとこれからの指導方法」についてでした。そこで“これまで”を私自身が受けてきたもの、“これから”を我々がこれからしていかないといけない研究指導法として考えてみることにしました。
私が受けてきた“これまで”の指導は、答えを探す方法は教わらず(教えられず)、自らその答えを探す方法を探すことから始まります。なので最初は途方に暮れますし、ものすごいストレスです。多くの、いわゆる昭和世代の先生がこの指導方法を受けてきました。ただ、初期の途方もない絶望感を切り抜け、答えを探す方法をどうにか身につけることができれば、何事にも応用が効いて、研究だけではなくその後の人生に大きなよい影響を及ぼすことができると思います。
では、“これから”の指導方法はどうでしょうか? これからの指導方法に対しては、その対象者ごとに考える必要があります。具体的には、私のようなX世代は仕事重視であり、強い自立心のもと、いわゆる昭和の匂いを醸し出しながら研究にも何事にも汗を流しながら時間をかけて取り組んでいると思います。
ただ、我々が研究を指導する相手の30歳前後の先生方は、いわゆるZ世代であり、承認欲求やタイムパフォーマンス、プライベート重視であることを認識する必要があります。具体的な論文の指導においても、タイムパフォーマンスを重視して、我々が受けてきたような、答えを探す方法から考えるのではなく、方法を具体的に教えて、答えをあまり時間かけずに得るような指導方法が必要です。その答えは、大きな答えになる必要はなく、階段で言えば一段一段を一緒に登るような感覚での指導が必要とされます。このような指導方法で短期的には多くの論文を書き上げることが可能です。
臨床現場は短期アウトカムに加えて長期アウトカムで様々な介入が評価されるようになってきました。アカデミアの指導においてどちらの指導方法がよいのか、それは長期的にも考える必要がありそうです。
一二三 亨(聖路加国際病院救急科医長)[短期アウトカム][長期アウトカム][指導方法]