著: | 志水太郎 |
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判型: | A5判 |
頁数: | 264頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2014年02月28日 |
ISBN: | 978-4-7849-4394-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
・医学部教育や卒後臨床研修だけでは学ぶことが難しい,指導医に必要なリーダーとして医療チームを率いる技術や教育する技術を,「リーダーシップ」「マネジメント」「教育」の3つの側面から徹底解説。今日から自分を変えていける心強い言葉が満載です。
・「どう教えればよいかがわからない」「手本がない」「良い方法を提示されても自分にはできない」というあなた,リーダーとして困難に立ち向かうあなたに寄り添う,指導医のための座右の書です。
第1章 リーダーシップ
最初は一人から始まる
「リーダーシップ」と「マネジメント」の違い
リーダーシップとマネジメントの使い分け
リーダーシップに大事なもの
【コラム】カリスマリーダー・親分型リーダー
リーダーシップとSOAP
S(Subjective:話を訊く):よく耳を傾け、感謝を忘れない
O(Objective:観察する):森と木を同時に見る
A(Assessment:見解を出す):提案の形で巻き込む
【コラム】より良い見解のための二つの質問
P(Plan:方針を出し、実行する):建設的に進める
Planその1 決断スピードのレンジ
Planその2 行動力と配慮
【コラム】医師の決定ではない決断
リスク管理と危機管理
患者のリスク予測
副リーダー
多職種とのコミュニケーション
コミュニケーションを高める最初のステップ
チームの危機への対処
戦わない
反対者を理解者に
メンバーとの衝突
メンバー同士の衝突
【コラム】メンバー同士の衝突、あるリーダーのとった行動
メンバーを守る
一緒に戦う
プレイヤーから抜けられない症候群
研修医の多様性
【コラム】後期研修医と初期研修医の違い
研修医のストレス耐性
「最も良い上司」の条件?
どう褒めるか、どう拾うか
【コラム】チームを「細かく管理する」ことのデメリット
平静の心とバルコニー
面子
悪口
【コラム】院内の嫌われ者?
信頼されるためには?
指示の具体性
安全な指示をめざす
緊張度のsweet spot
情熱の効果
ひいき
メンバーを理解するために必要な三つのポイント
社会歴
何気ない一言
気負いは不要
よく使う言葉集
時間の確保
【コラム】息抜き
飲み会の扱い方
【コラム】傭兵稼業のすすめ
第2章 マネジメント
どのようなチーム編成がよいか
二つの指示系統モデル
マネジメント・コントロールの導入
行動コントロール:「行動を定め、管理する」
行動コントロールのメリット
行動コントロールのデメリットとその対策
【コラム】行動コントロールとエビデンス
結果コントロール:「まずは任せる」
結果コントロールのメリット
結果コントロールのデメリットとその対策
最初は「結果コントロール」を強くしすぎない
学年は建前
結果コントロールから行動コントロールに戻す場合の注意点
人材・文化コントロール:「行動の規範と環境、そして人材」
チームのヴィジョン
日々の診療を効率化するポイント
タイムフレームの設定
スケジュールの一例(総合内科チーム)
プレラウンド
全体ラウンド
診るべきポイント
チャート回診
【コラム】朝のカンファレンスの是非
リーダー回診
午後のまとめ回診
【コラム】お昼寝時間
ナイトラウンド
【コラム】入院ケアバンドル「A【コラム】RED【コラム】SPOON」
モチベーションも大事だけど
プラスのモチベーション
マイナスのモチベーション
感情を切り離す
叱り方
自分のいない現場
第3章 教 育
ベッドサイドが現場教育の中心
「病歴+フィジカル」が8割
パッケージ化で教える
Take home messageの役割
病状説明も大事な教育の場
Why? How? クエスチョン
ホスピタリティ、倫理観の教育
パッションとコンパッション
研修医のパッションを高めるには
研修医のコンパッションを高めるには
急変/急性期対応スキルをどう鍛えるか
【コラム】千仭の谷に突き落とす
決断力をどう鍛えるか
研修医が参加しやすい回診環境
【コラム】そのディスカッションに患者はいるのか
「知らないフリ」メソッド
研修医の重大なエラーをどう指導するか
教育を諦めない
レクチャー教育の限界
学習者が主役?
知識共有vs思考共有
【コラム】タイムリーな学び
こんなカンファレンスがあったらいい! 新しいカンファレンスのつくり方
個人制vsチーム制
検索方法を教える
Pimpingと21世紀の教育
クリエイティブなディスカッションのために一つだけ必要なものは何か?
板書の訓練
教育の輪の拡散
リーダーを育てる
教育者を育てる
チーフレジデントが心すべきこと
すべての医師がリーダーの力を伸ばすために
この本は日本の現役の総合内科医が書きました。指導医が、どうすればメンバーの信頼を得てチームの性能を最大化し、また教育者として後輩たちの力を効果的に引き出せるかについてのアイディアをまとめた本です。
現在、医師は2年の初期研修とそれに続く3年程度の後期研修の後に、指導医としての役割を担うようになるのが一般的です。しかし多くの場合、「指導医」という名前がつく前から医師は指導・教育の役割を担うことになります。たとえば、初期研修医でも2年目になれば後輩を指導しますし、後期研修医やチーフレジデントになればさらに多くの研修医を指導することになります。学年が上がるにつれ、プレイヤーとしてだけでなくリーダーや教育者としての視点とそれに基づいた行動を要求されることになります。
2004年から新しい卒後臨床研修制度に伴うスーパーローテーションが始まり、それ以来、研修医の平準的な診察技能を高めようという機運も高まってきました。プレイヤーとしての技術を高める教育環境は改善されてきたものの、リーダーとして「医療チームを率いる技術」「教育する技術」の訓練は、残念ながらまだ誰もが容易に学べる環境にはないのではないかと思います。
プレイヤーとして成功するのは簡単ではないかもしれません。それと同時にリーダーとして成長することも、別の次元で簡単ではないかもしれません。プレイヤーとリーダーのスキルはお互い独立しているようにも見えます。しかし、医療チームのリーダーがプレイヤーとして本当の意味で成功するには、チームの連携やバックアップが必須です。その意味で、プレイヤーにとってもリーダーの技術、つまりリーダーシップとマネジメントの柱を確立させておくことは非常に重要だと思います。
指導医にとって、教育者の側面は重要です。ギルド的要素の強い医師の社会で、ベッドサイドをはじめリアルなハンズオンやアートの教育が果たす役割は、医学知識の教育と同等かそれ以上に大きいものですし、その伝承は講義スライドを通してではなく、生身のコミュニケーションにより行われるものです。筆者はこれまで、いくつかの指導医向け講習会に講師としてご招待いただいたことがありました。その際、若手からベテランまで幅広い学年の指導医の先生方にお会いして感じた彼/彼女らのニーズとして、「教育に熱意がないわけではない。ただ、どう教えればよいかがわからない」「手本がない」というご意見、そして「良い方法を提示されても自分にはできない」というご意見が多かったように感じます。
日本医事新報社の磯辺様から「指導医向けの本を書いてほしい」というお話をいただいたとき、最初、自分の学年でそのような本を書くのはまだ早いのではと思いました。しかし、今の私の学年だから書けることが、自分に学年の近い新人指導医たちの役に立つのなら、と結局は快諾させていただきました。
本書では指導医という言葉でなく、あえて「リーダー」という言葉を使っています。指導医という名称を使うと、研修医を臨床面で指導する印象が強くなってしまうと思ったからです。上級の医師にとって研修医と一緒に仕事をすることは、チームワークや業務効率といった純粋な臨床医学の側面だけでない関わりもあります。指導医は医師チームの中で研修医や医師スタッフの医学的な監督・教育だけをすればよいというわけではなく、医学的側面だけにとどまらない指導者の立場として活躍する場も多いからです。そこで指導医よりも少し意味が広い言葉として、リーダーという言葉を用いています。
また、医師チームのリーダーとして仕事をすることと、様々な職種を含む医療チームのリーダーとしてチームをまとめていくことには共通点も多いと思います。医師チームのリーダーであることと医療チームのリーダーであることは、医療施設で勤務する上では切り離せない関係だと思いますし、業務を円滑に運営するためにどちらもバランスよく仕事を遂行していくことが大切だと思います。
その意味で、この本の主な読者対象はこれから指導医になっていく後期研修医以上の学年の若手医師たちですが、医療チームに携わる多くの方にもお楽しみいただける内容にもなっているのではないかと思います。
この本が日本の医療現場のリーダーたちの成長に貢献することを願っています。
それでは、Enjoy this book!!
2014年2月
志水太郎
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。