(概要) 国立がん研究センターはこのほど、胃がんの対策型検診として、これまでのX線検査に加え、内視鏡検査も推奨するとしたガイドラインを公表した。
国立がん研究センターは4月20日、『有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版』(ガイドライン作成委員会委員長=祖父江友孝阪大院教授)を公表した。改訂は2005年度以来。
14年度版では、対策型検診(市町村が実施する住民検診)として、従来の胃X線検査に加え、新たに胃内視鏡検査を推奨。40歳台の胃がん罹患率は低いため、対象年齢はX線検査、内視鏡検査ともに「50歳以上が望ましい」と明記した。内視鏡検査の間隔は2~3年とし、前処置の咽頭麻酔によるショックや、穿孔・出血などの偶発症に対応できる体制を整備した上で実施すべきとしている。
今回、内視鏡検査を推奨する主な根拠となったのは、新潟県と鳥取県で実施された症例対照研究と、韓国の国家がん検診データベースに基づく症例対照研究。内視鏡検査の受診により、新潟と鳥取では30%、韓国では57%の死亡率減少が認められた。
ガイドラインでは、ペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査の併用法(ABC検診)についても検討。「死亡率減少効果を検討した研究はなかった」として、対策型検診として推奨しなかった。
昨年12月にガイドラインの改訂案が公表された際、ABC検診の普及を進める認定NPO法人「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」(三木一正理事長)は「ピロリ菌の検査と除菌療法による胃がんの予防を提言する世界保健機関(WHO)の勧告を無視している」などとして再考を求めていたが、改訂案から変更は行われなかった。
●ABC検診導入に賛否
ガイドラインは学術的な観点からの政策提言。胃がん検診を含めた、対策型のがん検診全般の見直しについては現在、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」で議論されている。同検討会は8月をメドに報告書を取りまとめる予定だ。
4月23日に開かれた会合では、胃がん検診にABC検診を導入すべきか議論。参考人として出席した三木氏は「ABC検診は胃がん対策として、現時点で考えられる実行可能な、最も費用対効果の高い、簡便・安全な方法」と述べ、対策型検診に組み込むよう求めた。一方、委員からは「導入には死亡率減少効果の証明が必要」などの指摘がなされた。