褥瘡は持続的な圧迫が原因で,血流が途絶することで生じる創傷である。骨の出たところには高い圧力がかかり,また骨に近いところのほうがより高い圧力がかかる。褥瘡は骨突出部に発症し,皮下の深いところの組織障害が高度である。したがって,褥瘡の初期症状は痛みのみのことが多い。
寝たきりの患者には柔らかい寝具を用い,体位変換も一般に行われているので,圧迫で傷んだ組織は自己修復されることが多いが,低栄養状態下では組織修復が行われず,褥瘡は悪化する。褥瘡治療の一環として電動ベッドで背上げをしたり,体位変換や車椅子坐位などが行われるが,皮肉なことにこれらの行為時に,皮膚と骨の間に横方向の力である「ずれ」や皮膚への「摩擦」が起こりやすく,これも褥瘡発生・悪化の原因になる。
褥瘡の治療には創傷局所療法が必須であるが,「持続的圧迫の原因対策」「栄養改善」「ずれ・摩擦対策」も実施しないと治癒は望めない。医師や看護師単独では対策が難しいことが多く,症例ごとに,歯科医師,管理栄養士,理学療法士や作業療法士,薬剤師,創傷専門看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師や創傷管理関連特定行為看護師)等,多職種での連携をケアマネジャーと相談しながら行っていく。
在宅の現場を訪問して創傷を観察し患者の環境をみることで,褥瘡発症原因を推察し栄養状態もアセスメントする。創面では,感染徴候・壊死組織・肉芽の色・ポケットの有無・皮下の硬結の有無等をみる。
ポケットがあれば,電動ベッドの背上げ時や体位変換時に「ずれ」が起こっている可能性がある。体圧分散マットレスが適切に選ばれているかも評価する。できればCRP,Alb,血清亜鉛を含む一般採血検査を行う。
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