No.4812 (2016年07月16日発行) P.74
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-01-23
年に一冊あるかないかだが、誰彼なく薦めまくりたくなる本がある。ハーバード大学教授である外科医アトゥール・ガワンデの『死すべき定め』は、間違いなくそんな一冊だ。「定め」の対象は老化と末期がん。
家庭での老人介護には限界があるので、どうしても施設にたよらざるをえない。しかし、高齢者用施設の多くが医療という立場から運営されてしまっているのは大きな問題だ、と論じていく。そのため、保護と安全が重視されすぎ、入居者の意志と自由が妨げられている。結果として、老人たちに生きる意欲を失わせ、不幸な最期を迎えさせてしまっているのではないかと。
少々リスクがあっても、自立を促せばそのような問題は克服できるという。例として、ペットの世話をしてもらうようにしただけで死亡率が有意に減少したという、信じられない事実があげられている。
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