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在宅患者「居住場所」「状態」の評価が争点 - 月1回訪問による医学管理料の評価を検討 [どうなる?診療報酬改定]

No.4778 (2015年11月21日発行) P.9

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2016-11-25

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(概要) 次期診療報酬改定に向け、在宅医療を巡る議論が活発化してきた。今後は在宅患者の実態に即した「居住場所」や「状態」に応じた評価のあり方が争点となる。

中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)は11日、次期2016年度診療報酬改定に向け、在宅医療の評価のあり方を巡り議論した。在宅医療の主な争点となっているのは、「患者の居住場所に応じた評価」と「患者の状態に応じた評価」だ。

●高齢者集合住宅と居宅で差別化を
居住場所に応じた評価を巡っては、前回の14年度改定で「患者紹介ビジネス」など在宅医療の不適切事例への対応として、高齢者向け集合住宅を「同一建物同一日」に訪問した場合の訪問診療料や在宅時医学総合管理料(在総管)、特定施設入居時医学総合管理料(特医総管)の評価を大幅に引き下げた。
しかし、同一日を避ければ引下げの適用外となることから、厚労省は複数日に分けて同一建物に個別訪問するなどの「効率性の低いケースが出ている」と指摘。評価のあり方として、(1)高齢者向け集合住宅と居宅で評価を分ける、(2)診療患者数による評価の細分化、(3)一般のアパート、団地等において複数の患者に訪問診療した場合には、一定の配慮の上、集合住宅の診療患者数に応じて評価─を提案した。
在総管と特医総管については、患者の重症度を加味し、現行の同一建物居住者かそれ以外という基準から、(1)重症患者(月2回以上訪問)、(2)その他(月2回以上)、(3)その他(月1回)の3分類に変更した上で、集合住宅内の診療患者数に応じて評価を細分化する案を示した。これを受け、猪口雄二委員(全日病)は「居場所でなくても重症度と移動時間の二軸で分ければ評価できるのではないか」との考えを示した。

●「前改定は医師のモチベーション下げた」
これに対し、松本純一委員(日医)は診療患者数で評価を細分化することに「違和感がある」と指摘。
前回改定での大幅引下げはあくまで一部の不適切な医療機関の排除が目的だったとし、そうした事例を排除する効果は認める一方で、「訪問診療を行う医師のモチベーションを下げた」と問題視した。
中川俊男委員(日医)は患者数による評価の導入で、新たなモラルハザードが発生することを懸念。「多くの患者を集めるネットワークを持つ在宅専門の業者が今後登場するのではないか」として、慎重な検討が必要との考えを示し、厚労省案を牽制した。

●月1回の要件設定は概ね了承
患者の重症度に応じた評価では、現行の医学管理料が患者の状態にかかわらず月2回の訪問診療が要件となっている点について、厚労省は訪問回数で患者の満足度に大きな差がないという調査結果を踏まえ、月1回の訪問による評価の導入を提案。診療側、支払側ともに方向性については概ね了承した。
厚労省はこのほか、人工呼吸器や中心静脈栄養が必要なケースや、悪性腫瘍、肺高血圧症などの長期にわたる医学管理の必要性が高い患者について、疾患・病状に応じた評価も導入する案を示した。

【記者の眼】月1回の訪問による医学管理料の算定が可能になる見込みとなった。しかし、具体的な点数設定にあたっては、月1回の訪問が月2回の半分の手間ですむわけではない。2回目以降の評価のあり方には慎重な議論が求められるところだ。(T)

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