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看護職員の夜勤「72時間ル - ル」で議論 - 短時間夜勤を実人数にカウントするかが争点 [どうなる?診療報酬改定]

No.4780 (2015年12月05日発行) P.9

登録日: 2015-12-05

最終更新日: 2016-11-25

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(概要) 看護職員の夜勤のあり方を巡り診療側と支払側の意見が真っ向から対立した。厚労省が示した月平均夜勤時間の算出方法の見直し案に、支払側や日看協は強く反対した。

中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)は11月25日、看護職員の夜勤のあり方を巡り議論した。争点となったのは看護職員の月平均夜勤時間超過減算、いわゆる「72時間ルール」の見直しだ。
同ルールは医療従事者の負担軽減と医療安全の確保という視点から、入院基本料算定病棟の看護職員の月平均夜勤を72時間以内と定めた施設基準。要件を満たせない場合、大幅な減額となる特別入院基本料を算定するが、3カ月間は通常の8割を算定できる緩和措置が設けられている(図1)。

●日看協「夜勤制限の唯一の歯止め」
厚労省は会合で、看護職員の月平均夜勤時間が62~63時間であるとの調査結果を示し、72時間ルールが果たしている役割を強調。ルールを継続した上で、月平均夜勤時間算出方法(図2)の分母に短時間夜勤の職員を加える案を提示した。現行は、月平均夜勤時間16時間以下の看護職員は分母の「夜勤時間帯の実人員数」にカウントされず、育児や介護中の看護職員の就業時における足かせになっているとの指摘がある。厚労省案はより多くの看護職員で夜勤を分担できるようにすることが狙い。
診療側は72時間ルール自体が医療機関にとって看護職員確保のハードルとなっていることは問題としつつ、算出方法を見直す方向性については賛同。
一方、支払側と日本看護協会はこれに反対した。平川則男委員(連合)は看護職員の勤務環境の悪化を懸念。夜勤が月1回など極端に少ない看護職員を分母に入れることで、「72時間以内」を満たすことが容易になるため、80時間以上の夜勤を担当する看護職員が増加する恐れが強いと訴えた。福井トシ子専門委員(日看協)は看護職員の夜勤は二極化している状況にあると指摘。見直しにより、夜勤80時間超の看護職員が増えることは確実とし、「72時間ルールが夜勤制限の唯一の歯止め」と強調した。
これに対し、猪口雄二委員(全日病)は、「病棟ごとに必要な夜勤時間数があり、多くの看護職員でそれを分担できれば1人当たりの夜勤時間は間違いなく減る」と反論。算出方法見直しによる影響をどう見るかは、立場によって完全に意見が分かれた形だ。
このほか同日の会合では、認知症を有する身体疾患患者への入院対応を巡る議論も行われた。厚労省は、BPSDへの対応が不十分であったり、身体拘束されているケースが多いなど、現状の病棟での対応は課題があると指摘。多職種によるチームが回診や院内研修などを通じ、病棟での対応を向上させる取り組みを評価する方針を提示し、了承された。

【記者の眼】病院勤務看護職員のうち未就学児のいる者は17.5%で増加傾向にある。こうした職員が月1回でも夜勤できる仕組みをどう構築するか。一方過重負担への配慮も不可欠だ。例えば夜勤専従以外の「80時間超」が一定割合以上の場合に減算する規定を設けてはどうか。(T)

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