株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

キューバでの学会「Universidad 2014」に参加して─キューバ社会の医療・福祉を見る [エッセイ]

No.4763 (2015年08月08日発行) P.72

田中正敏 (福島県立医科大学名誉教授(社会医学))

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 学問の細分化や専門化も加わり、国内外でいろいろな学会が開催されている。学会に関する情報もインターネットで入ってくる。2013年にチェコの首都プラハで開催された建築環境工学に関連する分野の国際学会CLIMA 2013において、筆者は東日本大震災における仮設住宅について発表した。その関係から、キューバで開催される「Universidad 2014」の学会事務局から招聘があった。キューバは医療・福祉・教育面で世界的に注目されている国である。1959年の革命により米国との国交が途絶え(2015年6月30日、国交回復したが)、経済的には厳しい局面にある。

    以前から福祉国家としては英国や北欧諸国が知られている。筆者はかねてから各国の医療・福祉施設に関心を持っており、今回のキューバ行きは、その実状を知る機会と考えた。



    学会開催期間は2014年2月11〜14日の4日間で、午前は9~12時30分、午後は14~17時30分。筆者のテーマは「温熱環境の基準」であり、そのほか自然災害に対する大学の役割など20の主なトピックスにわたった。本学会で使用される第一言語は当然スペイン語、第二言語は英語、ポルトガル語である。デスク上の器械にイヤホンを接続しダイヤルを回して言語を選択する同時通訳装置があり、設備は整っている。230頁ものプログラムを渡されたが、そのほとんどがスペイン語である。

    北半球諸国からの演者はスウェーデン、ドイツ、ハンガリー、そして筆者のみのようであり、多くがメキシコやベネズエラなどの中米、ブラジルやアルゼンチンの南米、そしてアフリカ諸国からであった。9回目となる今回のUniversidad 2014の名簿には、5500人あまりの参加者があった。会場のハバナ国際会議場は国立京都国際会館ほどの規模で、首都ハバナの西郊外に位置している。

    筆者の宿泊したホテルは、学会場と市の中心エリアの中間地点に当たる海岸通りに立地しており、近くには日本国大使館とJICAやスーパーマーケットの建物、広い敷地を持つホテルなどがあった。宿泊した高層建築のホテルでは、学会用に中層階までの部屋が割り当てられ、ベネズエラからの参加者が多くを占めていた。学会参加者のために、ホテルの入口脇のデスクに女性3名が待機していた。聞けば、国立大学の観光学科の女子学生2名と指導教官であり、実習・実技の授業の一環とのことであった。

    学会前夜には歓迎イベントが市内の大劇場で行われた。関係大臣や各団体の挨拶に続いて、ダンスやラテン音楽の演奏などが次々と披露され、夜半まで続いた。

    翌朝、ホテルの玄関付近に学会専用のシャトルバスが待機しており、朝食もそこそこに会場に向かった。受け付けをすませた後、発表用のパワーポイントデータの提出と確認があった。

    展示ブースにはいろいろな分野の展示があり、係員が説明に当たっていた。医療分野のブースの説明は、大学の医師や医学生が交代で行っていた。

    キューバの医療制度はプライマリケア重視のファミリードクター制であり、人口に対する医師数は日本の数倍、世界でも最も多いグループに入る。教育費は留学生を含め無料であり、南米やアフリカからの留学生も見られる。本学会にもそれらの国の人々も多く参加していた。展示ブースには民芸品を売るところも多く、広場の数張りのテントや屋台では飲み物や食事が供され、昼食時にはラテン音楽が始まり、楽器を演奏する人やダンサー、見物人も巻き込んでのランチタイムとなった。

    残り1,241文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top