▼今回の診療報酬改定で新設された「地域包括ケア病棟」の機能充実や支援を目的とする地域包括ケア病棟協会が発足した。設立を主導したのは日本慢性期医療協会。改定施行からわずか1カ月半後の新協会発足は、厚労省の宇都宮啓医療課長も「びっくり」するほど迅速な対応だ。設立総会には全国から約250人が集まるなど、日慢協会員の地域包括ケア病棟への関心の高さが窺える。
▼亜急性期入院医療管理料に代わり新設された「地域包括ケア病棟入院料/入院医療管理料」は、療養病床についても1病棟限定で届出が可能だ。療養病床から転換する場合、看護配置基準が20対1から13対1となり人件費は増加する。しかし、同入院料1は2558点に設定されたため、収支では大幅なプラスとなる可能性が高く、魅力的な点数といえる。
▼一方、7対1入院基本料の要件厳格化により急性期病棟からの移行も一定数は予想されるが、総合入院体制加算の見直しで高度急性期病院については算定不可となったこともあり、届出の機運はそれほど高まっていないようだ。7対1維持のための調整弁として、一般病棟の一部を転棟するケースが多いとみられる。自院内に急性期後の受け入れ先を確保することで、一般病棟ではより重症度の高い患者の受け入れが可能になり、平均在院日数や「重症度、医療・看護必要度」の要件をクリアしやすくなるからだ。
▼地域包括ケア病棟には、(1)急性期からの受け入れ、(2)在宅等の患者の急変時の受け入れ、(3)在宅復帰支援─の機能が求められている。療養病床からの転棟が増えれば在宅医療を支援する機能は強化される。しかし、急性期後の受け入れ機能については、算定メリットの大きい同入院料1で在宅復帰率が亜急性期の60%から70%に引き上げられたことで、早期に在宅復帰を望めない患者の外部からの受け入れが困難になり、地域連携に支障が生じるとの懸念がある。
▼地域包括ケア病棟には患者を「川上」から「川下」、さらに在宅の「河口」までスムーズに流す役割が期待されている。一方、高度急性期病院の退院調整部門からは「改定後、受け入れ先の確保がより難しくなった」との声も出ており、依然として地域連携を取り巻く環境は厳しい。在宅に力点を置く地域包括ケア病棟については一定のメドがつきそうだが、地域包括ケア病棟が地域に根付くかどうかは、高度急性期・急性期からの受け皿としての機能を果たす病棟が、どれだけ誕生するかにかかっている。