▼複数の大手調剤薬局チェーンで薬剤服用歴を未記載で調剤報酬を不正に請求していた疑いが持たれている。こうした事態を受け、厚労省は日本薬剤師会などを通じ全国約5万軒の調剤薬局に薬歴の記載状況を自主点検するよう要請、3月中旬をメドに報告を求めている。塩崎恭久厚労相は会見で「仮に調剤報酬の不正請求があったとするならば、厳正に対処しないといけないのは当然」との考えを示した。
▼今回のケースで不正請求が指摘されるのは薬剤服用歴管理指導料。(1)薬剤情報提供文書による説明、(2)服用歴の記録と指導、(3)残薬の確認、(4)後発品の情報提供、(5)お薬手帳への記載─を実施した場合、1回につき41点を算定できる。今回問題が報道された『くすりの福太郎』のHPには「1店舗当たり1日平均100枚の処方箋を受付」とあり、仮に全ケースで同管理指導料を算定しているならば、1店舗あたり年間約1500万円の収益を得ていることになる。
▼薬剤服用歴管理指導料の5要件は地域における「かかりつけ薬局」に求められる機能としてどれも重要なものだ。しかし、どこまで実態に即しているのかは疑問が残る。同管理指導料はかつて「薬剤情報提供料」と合わせ計45点を算定できたが、厚労省がシールや書面による簡易な情報提供を容認したことにより、お薬手帳の役割を無視した対応が一部で横行していると問題視され、12年度改定で見直しが行われた経緯がある。14年度改定でもお薬手帳の有無で評価が2段階に分けられるなど、試行錯誤が続く点数といえる。
▼患者が必ずしも特定の薬局を利用していないという現状も無視できない。例えば、大病院周辺に立ち並ぶ門前薬局の場合、患者が当日の混み具合などで薬局を選択するケースは少なくないだろう。薬局側からすれば、患者が継続して来店しないため業務における薬歴管理の優先順位は低く、「記載は後回し」が常態化しているのではないか。
▼今回のケースは果たして大手チェーンに限られた問題なのか。仮に大手特有の問題となれば、不適切事案の報道を端緒に14年度改定で大幅引下げが実施された在宅医療の「同一建物」のようにピンポイントでの見直しが必要となる。一方、調剤薬局の大半を占める中小薬局でも同様のケースが散見されたとなれば、「かかりつけ薬局」が十分に機能していないことを示唆しており、そのあり方を含めた抜本的見直しが求められることになるだろう。