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死体検案を通して孤独死と高齢者の自殺について思う [エッセイ]

No.4796 (2016年03月26日発行) P.66

峠岡康幸 (広島県 町立安芸太田病院内科)

登録日: 2016-07-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 都市部の基幹病院で専門医として勤務していたときには経験がなかったが、県内山間部の公立病院で内科医として働いていると、業務の一環として死体検案を依頼されることがある。地方病院での検案例の多くは基礎疾患が進行した結果として起こった病死なので、臨床医が検案症例を詳細に検討することは、その地域における医療の問題点を炙りだすことにつながる。言い換えると、その結果は地域医療の通信簿のようなものであるとも言える。そこから何らかの教訓を得ることができるのではないかと考えて、少し前に検案症例をまとめて県医師会医学雑誌に報告1)した。

    その結果の概略を述べると、死因別では病死と災害死・事故死が半分以上を占めたが、全体の1/3が自殺であった。同様の検討報告があまりないので、自殺症例が他施設と比べて多いのか少ないのかはわからなかった。年齢で比べると74歳以下では自殺死の割合が高く、75歳以上では病死と災害死・事故死の割合が高かった。特に75歳以上では入浴中の死亡例が高かった。青年・中年の自殺者では当地区以外に住んでおり、地縁もない例が少なくなかった。当地区を自殺場所として選んだ理由はわからないが、彼らの多くは夜になると周囲に街灯もささないような山中で発見されており、冬季には積雪のために発見が死後からだいぶ経過した例もあった。

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