▼1991年に施行され、既に一般的になった特定保健用食品(トクホ)。今年4月には、国の審査を経ず、事業者の責任で食品の機能性を表示できる「機能性表示食品」制度が新たにスタートした。消費者庁は7月末までに受理した66商品をホームページで公開しているが、その約半数が、肥満や生活習慣病予防のため「内臓脂肪を減らす」「食事の脂肪の吸収を抑える」機能を謳う商品だ。
▼急激に規制緩和が進んだ健康食品。一般の店舗や通信販売のほか、薬局で販売されるケースも多い。そうした現状を踏まえ、厚生労働省は「かかりつけ薬局・薬剤師」のあり方を議論する検討会で、その基本的機能の1つに「健康食品の適正な使用に関する助言を行うこと」を挙げたが、医師の委員から一斉に懸念の声が上がった。「薬剤師が薦めた健康食品をやめると(病気が)良くなるケースがかなり目立ち始めている」(新田國夫日本在宅ヘルスケアアライアンス議長)、「どこの医療機関もそうした経験をしている。前より危険な世界になった」(羽鳥裕日医常任理事)。これに対し薬剤師の委員からは「これだけ情報が溢れていると、その患者に合わせてきちんと整理してあげるのが薬剤師の仕事」(森昌平日薬副会長)と歓迎する声が上がった。
▼厚労省は一方で、後期高齢者の保健事業に関して、体重減少や低栄養、サルコペニアなどのリスクを回避すべく、管理栄養士と共に薬剤師を訪問指導・相談の機能として活用する考えを示してきた。栄養指導を行う保健職種として薬剤師がクローズアップされており、期待の高さが窺われる。
▼何をどこまで求めるのか。医療側の懸念を払拭し、国民の信頼を得るためには、専門職能団体の適切な研修による質の保証が不可欠だ。