▼2020年の東京五輪の開催に合わせて、「8Kスーパーハイビジョン」放送の開始が予定されている。8Kとは、横8000画素×縦4000画素を誇る超高精細映像技術のことだ。その解像度は、デジタル放送の通常規格である「フルハイビジョン」の16倍。画面に近寄っても画素構造が分かりにくく、視野角全体に画面が映る距離で視聴すると、まるで映像の中にいるような臨場感を味わえるのが特徴とされる。
▼そんな次世代の映像技術が、医療現場で実用化されるかもしれない。昨年11月には、8K映像を用いた世界初の内視鏡手術が杏林大病院で実施され、成功を収めている。8Kの技術開発を先導するNHK放送技術研究所は、高い臨場感を利用し、術野の映像をモニターで中継することで術者以外の教育研修に応用することも考えているようだ。
▼日々の診療・診察に活用したいと望む声もある。先日開かれた総務省・厚生労働省の有識者懇談会の会合では、離島医療に従事する医師や地方の病理医らが出席し、8Kの臨床応用の意義を語った。
▼彼らによると、8Kのような高精細の映像は、離島の医療では、遠隔診療に活用できるほか、外科手術の際に島に居ながらにして本土の医師から具体的な助言を受けやすくもなるという。一方、解像度の高さが診断の精度に直結する病理診断では、誤診率の減少が期待できるだけでなく、遠隔診断が容易になることで、地方の病院にとっては専門医不足をカバーする有効な方策にもなりうるという。
▼総務省と厚労省は、こうした技術の進歩や現場の声を踏まえ、8Kの臨床応用に前向きな姿勢を見せている。8Kが今後、「きれいな映像が見られる」だけでなく、地域医療の質向上に資する技術としても発展していくことを期待したい。