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高熱時に向精神薬服用を中止すべき理由

No.4728 (2014年12月06日発行) P.70

和田 健 (広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科主任部長)

登録日: 2014-12-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

向精神薬を服用中の患者の入院を引き受けるとき,38℃以上の高熱時には向精神薬を中止するようアドバイスを受けることがあるが,その根拠を。いわゆる悪性症候群が起きやすいのか。 (千葉県 H)

【A】

向精神薬の中でも,抗精神病薬についての質問と考える。抗精神病薬を服用中の患者が高熱を呈する場合,その原因には様々なものが考えられる。肺炎や腎盂腎炎,胆嚢炎などの感染症や,SLE(systemic lupus erythematosus)などの膠原病,脱水,熱中症,悪性腫瘍による腫瘍熱などが挙げられる。これらの疾患の合併に際しては,高熱を呈していても抗精神病薬を中止する必要はない。
抗精神病薬の中止を考えなければならない高熱のケースとして挙げられるのは,薬剤アレルギーによる場合,そして悪性症候群による場合である。抗精神病薬による薬剤アレルギーは高頻度に生じるものではないが,他剤によるものと同様に中止が原則である。悪性症候群は,抗精神病薬の開始や急激な増量に関連して生じる重篤な副作用であり,原因薬剤の中止が必要となる。必ずしも抗精神病薬の用量が増量されていなくても発症する場合があるので,疑わしい場合は服用を中止する。
また,抗精神病薬を服用中の患者が脱水や熱中症,水中毒などにより発熱を伴って横紋筋融解症をきたし,引き続いて悪性症候群に移行することがある。悪性症候群の準備状態とも言えるが,この場合,継続投与中の抗精神病薬の中止は精神症状の悪化をきたすリスクがあるため,通常は行わない。抗精神病薬を増量する必要があるときは,慎重に行う。

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