【Q】
現在4種混合ワクチンは15歳未満にしか承認が下りていませんが,15歳以上の3種混合ワクチン未接種者がいた場合はどのように対応すればよいのでしょうか。 (愛媛県 O)
【A】
種混合(DPT-IPV)ワクチンの接種対象は小児(15歳未満)とされ,15歳以上の者に対する接種は承認されていません。D(diphtheria:ジフテリア)とT(tetanus:破傷風)については,沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(0.1mL)や沈降破傷風トキソイド(0.5mL)を,ポリオについては,不活化ポリオワクチン(0.5mL)を成人に対しても接種できますが,P(pertussis:百日咳)を含有する製剤は,これまで供給されていた3種混合(DPT)ワクチンの製造が中止されたため,DPT-IPV以外には入手が困難な状況です。
今回のご質問は,15歳以上の3種混合ワクチン未接種者に関する内容ですが,現場ではそれ以外にも年長児や成人に対して百日咳成分含有ワクチンの接種が必要となる場合があります。たとえば,米国ではDPTの接種回数が日本より多いので,米国の学校へ留学・編入する者は追加接種が必要となります。また,世界的に成人の百日咳対策の重要性が議論されており,米国での出産に際して,児の祖母にあたる者が産前産後や育児の手伝いに日本から渡米する際,米国での百日咳予防の推奨策(cocoon strategy)に基づいて百日咳成分含有ワクチンの接種が推奨されるケースがあります。これらはいずれも任意接種の対応ですが,彼らの接種環境を整えるために,15歳以上でも使用できる百日咳成分含有ワクチンが国内で承認されることが望まれます。
では,承認製剤が入手できない現状でどのように対応するかということですが,個々のケースにより,ワクチンで期待できる効果と起こりうる副反応など安全性についての十分な説明と同意に基づき,対処することになります。承認されていない製剤を用いることの是非について明文化された資料は見当たりませんが,第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会の議事録(文献1)には,関連した議論が掲載されています。それによれば,医学的な判断に基づく医師の裁量を完全に制限するものではなく,医学上必要な場合は,適切な手順を経た上での承認適用外での使用もありうると個人的には理解しています。
1) 厚生労働省:第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(2015年1月9日開催)議事録.
[http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000080441.html]