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HCV-RNA陽性でセログループ不明患者にどう対応する?【肝疾患診療連携拠点病院などと連携し,genotypeを測定】

No.4783 (2015年12月26日発行) P.61

持田 智 (埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科教授/ 診療部長)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

健康診断でC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性を指摘されて受診する患者がいます。その中で,血液検査でHCV-RNA陽性であるにもかかわらず,セログループ判定不能とされる人がいます。このようなセログループ未確定患者の治療方針と,治療を開始するための申請書類の記載に悩む場合があります。どのように対応したらよいのでしょうか。自費でgenotypeを調べる以外に方法はありますか。埼玉医科大学・持田 智先生にお願いします。 (兵庫県 K)

【A】

ウイルスは,遺伝子の塩基配列が8%以上異なる場合にgenotypeとして分類します。HCVは少なくとも6種類のgenotypeに区分され,わが国では1b型が約70%を占めています。また,2a型は20%,2b型は約10%程度みられますが,そのほかのgenotypeはきわめて稀です。
HCVはgenotypeによってインターフェロン(IFN)治療の効果が異なり,1b型で高ウイルス量(HCV-RNA量≧5.0log IU/mL)の症例は難治性とみなされてきました。しかし,遺伝子検査は高額で保険適用がなく,代用としてセログループが測定されてきました。1b型と2a,2b型のHCV株では,NS4領域の抗原性が異なります。これを利用して,2種類の抗体(抗C14-1,抗C14-2)との反応性で分類するのがセログループです。セログロープの問題点としては,2a型と2b型を区別できないこと,両抗体ともに反応して「判定不能」となる場合が約10%でみられること,などが挙げられます。両抗体の反応性は検査結果に記載されていますので,より高値のほうをgenotypeとみなすとの考え方もありました。しかし,その信憑性はあまりありません。
IFN治療の時代は,セログループが「判定不能」の場合には,一般に1型とみなして治療していました。たとえそれが過剰診療であっても,医学的デメリットはありません。しかし,2014年9月に直接作動性抗ウイルス薬(direct-acting antiviral agents:DAAs)によるIFNフリーの治療が開始され,この状況は大きく変わりました。NS3/4A阻害薬アスナプレビルとNS5A阻害薬ダクラタスビルの併用療法は1b型のみに適応があり,2a,2b型では効果が得られません。また,1型でも欧米に多い1a型では効果が劣ります。このため,DAAs治療ではgenotype測定が必須です。「判定不能」のままで治療することは許されません。
一方,2015年5月から利用できるようになった核酸型NS5A阻害薬のソホスブビルは1型,2型ともに有効です。しかし,1型にはNS5A阻害薬レジパスビルとの配合薬が,2型ではリバビリンとの併用療法が保険認可されています。いずれも12週間の治療ですが,前者は計673万円,後者は534万円の薬剤費を要します。その差額は約140万円ですので,必ずgenotypeを測定して,適切な治療を行うべきです。
なお,2015年11月末にはオムビタスビル,パリタプレビル,リトナビルの配合薬も利用できるようになりました。保険適用は1型に限定されています。同配合薬は2型でも一定の効果が得られますが,治療成績が1型に比して劣るため,リバビリンとの併用療法としていずれ保険適用される可能性があります。したがって,同配合薬もセログループ「判定不能」での投与は許されません。2016年になると,genotypeの区分なく有効なDAAsの治験が開始される予定です。同製剤が保険適用されるまでは,保険診療でセログループを測定し,「判定不能」例では医療機関ないし患者の負担でgenotypeを測定する必要があります。なお,各都道府県の肝疾患診療連携拠点病院では原則的にgenotypeの測定が可能なので,診療連携で対応することをお勧めいたします。

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