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C型慢性肝炎の治療薬選択

No.4699 (2014年05月17日発行) P.60

四柳 宏 (東京大学大学院医学系研究科生体防御感染症学准教授)

登録日: 2014-05-17

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

インターフェロン治療の開始から20年以上が経過し,2013年末に難治な遺伝子型1・高ウイルス量のC型慢性肝炎へのシメプレビル,ペグインターフェロン,リバビリンの3剤併用療法が認可され,治癒率が向上しました。14年夏にインターフェロンを必要としない経口抗ウイルス薬2剤療法が認可,以降も経口薬が順次発売される由。新薬情報も含め,C型慢性肝炎の治療薬選択を,東京大学大学院・四柳 宏先生に。
【質問者】
柴田 実:柴田内科・消化器科クリニック

【A】

C型肝炎の治療方針の決定にあたっては,(1)ペグインターフェロン・リバビリン併用療法が可能か,(2)線維化進展例か,を考慮する必要があります。若年で肝線維化が進んでいない人は経口薬で治療開始可能ですが,後続の治療の可能性を狭めないように注意が必要です。
[1]治療の対象となるC型慢性肝炎
C型慢性肝炎の治療成績は特に遺伝子型1で飛躍的に向上しました。遺伝子型1の著効(sustained virological response)率はインターフェロン単独療法では5%未満でしたが,ペグインターフェロン・リバビリン併用療法で約50%,ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビル併用療法で90%近く(前治療無効例を除く)まで向上しました。
血液検査でALT値が31IU/L以上,もしくは血小板数15万/μL未満の場合,ほとんどの症例で慢性肝炎の所見が認められます。こうした場合も現在は抗ウイルス療法の適応とされています。
[2]治療法の選択
遺伝子型2の患者への抗ウイルス療法としてはペグインターフェロン・リバビリン併用療法が基本です(初回治療かつHCV RNA<5.0 logIU/mLの場合に限りインターフェロン単独療法の適応)。
遺伝子型1の患者に関しては低ウイルス量の初回治療に限ってインターフェロン単独療法が行われますが,その他の場合は,ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビル併用療法が第一選択になります。日本肝臓学会から出された治療ガイドラインでは,(1)前回治療無効(抗ウイルス療法中にHCV RNAが陰性化しなかったことで定義される)例かつ線維化非進展例の再治療にはペグインターフェロン・リバビリン・テラプレビル併用療法も可能,(2)若年(65歳未満が基準)の線維化非進展例では待機も可能,と定めています(文献1)。「待機」とは経口薬のみの治療を待つことを意味しています。
[3]経口薬のみの治療の対象
前述の通り,若年の線維化非進展例,すなわち発癌リスクの低い症例が待機可能例です。ペグインターフェロン・リバビリン併用療法が適応にならない例(主に貧血,心疾患,コントロール困難な自己免疫疾患や精神疾患合併例)も対象です。ペグインターフェロン・リバビリン併用療法無効例の治療は経口薬の適応となりうるところですが,ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビル併用療法がIL28B遺伝子の型にかかわらず高い治療効果を示すことから,第一選択となります。
[4]経口薬の治療を行う上での注意
2014年中にアスナプレビル(プロテアーゼ阻害薬)とダクラタスビル(NS5A阻害薬)の併用療法が上市される予定です。対象は遺伝子型1の患者であり,ウイルス排除率は約85%です。経口薬による治療を考える上での問題点は2点あります。
第一点はダクラタスビルに治療前から耐性を有する例が10~20%存在することです。こうした例ではアスナプレビル単剤で治療が行われ,アスナプレビル耐性ウイルスを誘導する可能性があります。アスナプレビルに耐性を獲得した場合,他のプロテアーゼ阻害薬にも耐性となり,事後の治療の選択肢が狭まる可能性があります。したがって,経口薬治療を行う前にダクラタスビル耐性ではないことを確認しておくことが望まれます。
もう1つは肝機能障害の副作用です。ALT正常上限の10倍以上の上昇も起こりえます。肝病変進展例では注意が必要です。
現在,臨床試験が行われている経口薬の中には,薬剤耐性,副反応の少ない経口薬も含まれており,臨床現場への登場が待たれます。

【文献】


1) Drafting Committee for Hepatitis Management Guidelines, the Japan Society of Hepatology: Hepatol Res. 2014;44(Suppl S1):59-70.

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