2010年,わが国においてもセンチネルリンパ節生検が保険適用となり,ラジオアイソトープと色素を用いて,乳房から最初にリンパの流れを受けるセンチネルリンパ節に転移を認めなければ,腋窩郭清を省略するという手技が標準治療として定着した。
さらに2010年,ASCOで発表されたACOSOG Z0011の結果によれば,乳房温存手術症例で,術後に放射線治療ならびにしかるべき薬物療法がなされるのであれば,たとえセンチネルリンパ節にマクロ転移があっても,2個以内ならば,その後の局所再発率や生存率に有意な差を認めず,郭清省略は可能とする傾向が強まった。2012年には,IBCSG23-01試験において微小転移に関して郭清省略群と郭清群の予後は同等であるという結果が報告された。
2013年,ASCOでは欧州で行われたAMAROS試験(センチネルリンパ節転移陽性症例を,郭清と腋窩照射のみで非郭清の2群に分けた試験)の結果が発表された。それによると局所再発,生存率ともに両群間に有意差を認めず,腋窩郭清の省略の方向性が定まった。ちなみに,3月に開催されたSt.Gallenコンセンサス会議において,Z0011のスタイルに準じて郭清省略に賛成すると答えたパネリストは72.7%に及んだ。
そこで,2013年の日本の診療ガイドラインでは,微小転移の郭清省略の推奨グレードはC1,マクロ転移ではC2と推奨グレードは2011年と同様であったが,2014年に見直され,微小転移の郭清省略は推奨グレードB,マクロ転移には「患者ごとに省略の可能性も検討されるべきである」という一文が加わり,C2からC1に改訂された。