2013年7月より,従来から認められていた自家組織を用いた乳房再建手術に加えて,人工乳房を用いた乳房再建手術が保険適用となった。これにより,術後の整容性を保つための選択肢の幅が広がった(文献1)。
保険適用となる以前は,人工乳房による再建手術に要する費用は70~100万円と高額であり,また,同手術を行う形成外科医も限られていた。そのため,多少の左右差が生じても,乳房温存療法が選択される傾向にあった。しかし,乳房再建手術という手術手技が進歩したことによって,多くの患者らが左右差のない乳房とともに,乳癌手術前と同様の自分らしい生き方を取り戻すことができるようになった。
乳房再建手術を行うタイミングには,(1)乳癌手術と同時に行う“一次再建”,(2)乳癌手術を終えてから一定の期間をおいて行う“二次再建”,の2種類がある。さらに,(1)乳頭・乳輪を残して,皮下乳腺全摘と同時にシリコンインプラントを挿入して再建を完了する“一期再建”と,(2)全乳房切除直後にティッシュ・エキスパンダーを挿入し,胸の皮膚と筋肉を引き伸ばした後に再建を完成させる“二期再建”,の2種類がある。
一次再建は,乳房の喪失感がなく入院期間も短いため,経済的・身体的負担が少なくなる。保険適用と相まって,希望者が増えることが予想される。
1) 中村清吾:Pharm Med. 2014;32(4):47-50.