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肺高血圧症の薬剤加療の進歩

No.4704 (2014年06月21日発行) P.58

山室 惠 (熊本大学循環器内科診療講師)

小川久雄 (熊本大学循環器内科診療教授)

登録日: 2014-06-21

最終更新日: 2016-10-26

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肺高血圧症は,予後不良な疾患の1つである。肺動脈の内膜と中膜肥厚を伴う肺血管病変の進行で病態は悪化し,発症後の平均生存期間は未治療の場合2.8年と報告されていた(文献1)。わが国では1999年のPGI2持続静注療法の認可により,肺高血圧治療に画期的成果が得られるようになった。本薬剤の導入で肺高血圧症の予後はある程度改善できるようになり,現在,最も肺高血圧の状態を改善させる薬剤となっている。しかし,PGI2持続静注療法は中心静脈から持続投与しないといけない,高温条件下では不安定になるといった問題点があり,内服薬の開発が期待されてきた。
そこで近年,肺高血圧のメカニズムに作用する各種の内服薬が開発されてきた。1999年にPGI2誘導体ベラプロストが原発性肺高血圧症に対して適応となり,2005年にエンドセリン拮抗薬ボセンタンが,2008年にはPDE5阻害薬シルデナフィルが発売された。その後,長期作用型であるPGI2誘導体ベラプロスト徐放薬,PDE5阻害薬タダラフィル,エンドセリン拮抗薬アンブリセンタンも発売されている。これら内服薬はPGI2持続静注療法ほどの効果はないものの,近年では3剤併用療法(PGI2誘導体,PDE5阻害薬,エンドセリン拮抗薬)がほぼ当然となり,平均肺動脈圧をかなり改善させることができるようになった。患者QOLも格段に良くなってきている。
今後,さらなる薬剤(内服,注射薬)の発売も予定されており,治療選択が少なかった肺高血圧症患者の予後改善に寄与するであろう。

【文献】


1) D'Alonzo GE, et al: Ann Intern Med. 1991;◆115(5):343-9.

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