近年の目覚ましい薬剤開発の進歩により,心血管疾患(CVD)発症予防として,高血圧症,脂質異常症,糖尿病の厳格な管理が可能となった。それにもかかわらず,CVD発症予防の現状はまだ十分とは言えない。
CVD発症には炎症が関与していることが示唆されており,Ridkerらは高感度CRP高値の患者がCVDのリスクであることを示している(文献1)。最近,そのRidkerらにより,心筋梗塞後でスタチンやACEI/ARB,β遮断薬,アスピリンなどが十分投薬されているにもかかわらず高感度CRPが2mg/L以上の患者に,IL-1β中和抗体canakinumabを投与してCVDの発症を抑制しうるかを検討する前向き試験(Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study:CANTOS)が進行中である(文献2)。既にphaseⅡトライアルで,この中和抗体は脂質プロファイルに影響をもたらさずにCRPやIL-6,フィブリノーゲンなどの炎症マーカーを有意に低下させることが報告された(文献3)。
CVD予防効果が示されている従来の投薬に加え,動脈硬化促進やプラークの脆弱化への関与が示されているIL-1βを抑えることで,さらなるCVD予防が実現されるのか,CANTOSの結果が注目されている。
1) Ridker PM, et al:N Engl J Med. 2000;342(12): 836-43.
2) Ridker PM, et al:Am Heart J. 2011;162(4): 597-605.
3) Ridker PM, et al:Circulation. 2012;126(23): 2739-48.