神経膠腫は神経膠細胞から発生する脳腫瘍であり,この中で最も悪性である腫瘍が膠芽腫である。膠芽腫術後に60Gy/30回の放射線治療を単独で行った場合の1年生存率は40%と低く,1980年代からは血液脳関門を通過するニトロソウレア系抗癌剤を併用した化学放射線治療が行われた。2005年には放射線治療単独と,これに経口アルキル化剤テモゾロミド(TMZ)を併用した比較第3相試験(文献1)において,TMZ併用群の1年生存率が60%と報告されたことから,これ以降,膠芽腫術後の標準治療は,TMZを併用した60Gy/30回の放射線治療となった。
さらに2013年には,初発膠芽腫に対してTMZ併用放射線治療と,これに抗VEGF抗体ベバシズマブ(BEV)を上乗せした比較第3相試験であるAVAglio試験(文献2)の成績が報告され,1年生存率では両群に有意差を認めなかったものの,無増悪生存期間(PFS),QOL悪化までの生存期間はBEV上乗せ群で有意に延長した。これらの結果から,BEV上乗せはTMZ併用放射線治療に代わる標準治療とはなりえないものの,予後不良な膠芽腫治療においてPFS延長とQOL維持・改善に有用な治療選択肢のひとつと考えられている。
BEVはこれまで,海外で再発膠芽腫の治療薬として承認されていたが,AVAglio試験の結果を受け,2013年6月にはわが国において,世界で初めて再発のみならず初発悪性神経膠腫に対する治療薬としての承認を受けた。
1) Stupp R, et al:N Engl J Med. 2005;352(10):987-96.
2) Gilbert MR, et al:N Engl J Med. 2014;370(8):699-708.