自己免疫性膵炎(AIP)は,1995年にYoshidaら(文献1)により初めて報告され,病態に自己免疫学的機序が関与し,膵腫大,膵管狭細像を呈する膵炎である。その免疫学的機序の解明のため,自然免疫や獲得免疫,疾患感受性遺伝子や動物モデルの解析などの研究(文献2)が現在進められており,病態が明らかになりつつある。2011年に発表された国際コンセンサス診断基準(ICDC)では,わが国に多いとされるIgG4が関与するものを1型AIP,欧米に多くIgG4の関与しない好中球病変を特徴とするものを2型AIPと分類している。
1型AIPは多彩な膵外病変(硬化性胆管炎,後腹膜線維症,涙腺・唾液腺炎,腹腔・肺門リンパ節腫大,慢性甲状腺炎,間質性腎炎など)を伴い,膵ならびに膵外病変にIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることから,近年では全身性のIgG4関連疾患の膵病変と考えられている。一方,若年者に多く,炎症性腸疾患をしばしば合併する2型AIPの病態は,いまだ不明な点が多い。病理組織学的には1型AIPではlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)が,2型AIPではidiopathic duct-centric chron-ic pancreatitis(IDCP)が特徴とされ,ICDCではAIPの組織診断には手術検体やcore biopsyが必要とされているが,より低侵襲なEUS-FNAによるAIP診断についての報告(文献3~5)も認められる。
1) Yoshida K, et al:Dig Dis Sci. 1995;40(7):1561-8.
2) 内田一茂, 他:日消誌. 2014;111(8):1570-8.
3) Ishikawa T, et al:World J Gastroenterol. 2012;18(29):3883-8.
4) Kanno A, et al:Gastrointest Endosc. 2012;76(3):594-602.
5) 矢野正明, 他:日消誌. 2014;111(11):2181-9.