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乳癌の抗体療法

No.4768 (2015年09月12日発行) P.52

河口浩介 (京都大学乳腺外科)

鈴木栄治 (京都大学乳腺外科)

戸井雅和 (京都大学乳腺外科教授)

登録日: 2015-09-12

最終更新日: 2016-10-26

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抗体療法は特定の分子を標的として,その機能を抑制することや,免疫細胞による抗体依存性細胞傷害作用により効果を発揮する治療法である。乳癌は生物学的に多様な疾患であり,特定の治療標的を同定し治療戦略を練ることが,臨床的に重要な意義をなす。抗HER2抗体であるトラスツズマブおよびペルツズマブ,さらに,トラスツズマブ(T)と微小管阻害薬誘導体であるエムタンシン(DM1)が結合したT-DM1のように,新しい薬物移行技術を駆使した抗体療法が出現し,HER2陽性乳癌に対する治療にとって抗体療法は欠かせない。
ベバシズマブは,腫瘍の血管新生における増殖因子であるVEGF-Aを標的とするヒト化モノクローナル抗体であり,臨床応用のためにはベバシズマブを投与すべき患者層の抽出が課題となっている。
デノスマブは,破骨細胞の活性化に関わる分子であるRANKLを標的としたヒト化モノクローナル抗体である。RANKLに特異的,高親和性に結合しRANK-RANKL系のシグナル伝達を抑制することにより,骨転移患者における骨関連事象を改善するため,骨転移患者に対する治療の良い選択肢となっている。
また,他癌腫においてPD-1,PD-L1といった免疫細胞活性制御に関わる分子を抗体薬で抑えることにより飛躍的な治療効果を認め,標準療法のひとつとなりつつある。海外の臨床試験では乳癌における効果も報告されており,今後は新規免疫療法としての抗体薬の役割も高まっていくことが期待されている。

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