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regulatory(aviation)medicineと一般臨床医学

No.4773 (2015年10月17日発行) P.54

髙添一典 (航空医学研究センター検査・証明部長)

登録日: 2015-10-17

最終更新日: 2016-10-26

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航空法に基づく「航空身体検査マニュアル」(文献1)に運航乗務員の航空身体検査およびその適合基準が疾患別に設定されている。本検査の目的は,運航乗務員の医学的要因に起因する操縦不能あるいは操縦や判断ミスの防止である。
regulatory(aviation)medicineという言葉を,航空医学の書物や専門家間の会話で,それぞれ見聞きする。わが国における正式な訳語はまだないのではないかと思われるが,「一般臨床医学とはある部分で一線を画す,法的に定められた安全基準としての医学」というような意味で使用されている。適合基準を含む「航空身体検査マニュアル」はこれにあたる。一般臨床医学が土台であるが,航空身体検査は「規則」であり,一般臨床の判断と比較し,より安全策をとる立場をとる。
日本の航空身体検査基準および航空身体検査基準を満たさない場合でも所定の条件を充足すれば,専門家の審査により合格が得られるウェーバー制度は,海外と比較して厳しい,という声を耳にする。航空の安全という基本原則に反しない限り,基準の緩和は可能であると思われる。
一方,少なくとも羽田沖事故(1982年)以来,現在まで,定められたその基準により日本の航空における医学上の安全が保たれていることも事実である。「航空身体検査マニュアル」はおおよそ5年に1度見直され改訂が行われるが,一般臨床医学を見据えた上で確実な根拠を積み上げ,regulatory(aviation)medicineとしての医学的基準を慎重に検討していくことが肝要であると思われる。

【文献】


1) 国土交通省航空局:航空身体検査マニュアル.
[http://www.mlit.go.jp/common/001057921.pdf]

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