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乳癌の新治療戦略:POTENT試験 【ER陽性・HER2陰性乳癌にS-1は有用か】

No.4776 (2015年11月07日発行) P.56

石黒 洋 (京都大学標的治療腫瘍学特定准教授)

戸井雅和 (京都大学乳腺外科教授)

登録日: 2015-11-07

最終更新日: 2016-10-26

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エストロゲン受容体(ER)陽性かつHER2陰性原発乳癌症例に対しては,アントラサイクリンおよびタキサンによる治療効果は必ずしも十分ではなく,新たな治療戦略が望まれている。一方,テガフール+ウラシル(UFT)は,ER陽性乳癌に対しホルモン療法との同時併用で高い再発抑制効果が得られる可能性が国内の報告で示唆されている。UFTよりも強力な5-FU不活化酵素阻害薬を配合するS-1の,進行再発乳癌に対する一次または二次治療における奏効率は約40%で,アントラサイクリン,タキサン無効症例でも20%程度である。さらに,最近報告されたSELECT BC試験(進行再発乳癌一次治療)では全生存期間(OS)に関してタキサンに対する非劣性も検証されている。
また,術後補助療法としてのS-1の有用性は,胃癌に対する大規模比較試験(ACTS-GC)により証明されている。したがって,内分泌療法や従来の標準的化学療法で根絶しえない不顕性の微小転移を,S-1を内分泌療法と同時併用することで制御せしめることが期待できる。一方で,S-1の薬物動態には欧米との人種間差異があるため,推奨投与量が異なり,同じ日本人間でも個人間差異が大きい。今後,人種差やほかの外的因子に影響を受けない薬力学・薬物動態・薬理ゲノム学に基づいた新たな投与量補正法の開発も期待される。
以上より,標準的術後内分泌療法に比べ,S-1を併用することで再発抑制効果が高まることを検証する目的で,invasive disease-free survivalを主要評価項目とした,ER陽性,HER2陰性乳癌に対するS-1術後療法ランダム化比較第3相試験(POTENT試験)が行われ,登録は既に満了した。

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