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乳癌の術前薬物療法 【術前の抗腫瘍効果確認で病理学的完全奏効率が向上し,新規治療の開発も進展】

No.4779 (2015年11月28日発行) P.51

髙田正泰 (京都大学乳腺外科)

戸井雅和 (京都大学乳腺外科教授)

登録日: 2015-11-28

最終更新日: 2016-10-26

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乳癌の術前薬物療法は,ダウンステージングによる乳房温存率の向上を目的として,臨床に導入された。抗癌剤やホルモン療法を用いた術前療法により,乳房温存率は向上してきた。抗癌剤を用いた術前療法で,10~30%の症例において病理学的完全奏効(pCR)が得られた。pCRの得られた症例では,pCRの得られなかった症例と比較して予後が良好であることから,pCRは予後のサロゲートマーカーと考えられてきた。近年では,サブタイプ別に詳細な検討が加えられ,特にHER2陽性乳癌やトリプルネガティブ乳癌において,pCRは予後との関連が強いことが示された。
抗HER2療法であるトラスツズマブの併用により,HER2陽性乳癌におけるpCR率は約2倍の50%程度まで上昇しており,近年ではさらにペルツズマブ+トラスツズマブなどの抗HER2療法の併用なども検討されている。トリプルネガティブ乳癌においては,プラチナ製剤,抗VEGF療法であるベバシズマブの併用によりpCR率が上昇することが示されている。
また,術前薬物療法では抗腫瘍効果の確認が可能であることから,効果に基づく治療の個別化により予後が改善することも示唆されている。一方で術前薬物療法は,pCRを予後のサロゲートマーカーとして薬剤の効果を比較的短期間に検討可能であること,また,治療前後で組織・血液検体が得られることから薬剤開発の場として注目されている。実際,米国食品医薬品局(FDA)は,迅速承認における検討対象としている。

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