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アルコール依存症断酒補助薬アカンプロサート 【中枢神経系に直接作用し,飲酒欲求を低減】

No.4785 (2016年01月09日発行) P.46

竹井謙之 (三重大学消化器内科教授)

登録日: 2016-01-09

最終更新日: 2016-10-26

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従来,わが国ではアルコール依存症の治療薬としてジスルフィラムやシアナミドなど抗酒薬のみが使用可能であった。肝臓のアルデヒド脱水素酵素阻害薬である抗酒薬を服用後に飲酒をすると,アセトアルデヒドによる悪心・嘔吐,動悸などの不快な反応を引き起こし,飲酒の忌避につながる。しかし,副作用も少なくなく,断酒率の向上に寄与するというエビデンスも乏しかった。
2013年5月に上市されたアカンプロサート(レグテクト)は中枢神経系に直接作用し,飲酒欲求を低減する作用を持つ断酒補助薬である。アルコール依存症では脳内のグルタミン酸作動性神経の活動が亢進し,飲酒欲求につながるとされる。アカンプロサートは,グルタミン酸受容体の一種であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を抑制することで脳内神経バランスを保ち,断酒維持効果を示すと考えられている。
国内の臨床試験では,投与24週間の完全断酒率はプラセボ群36.0%に比し,アカンプロサート群では47.2%と有意に高かった。飲酒中に服用しても効果は期待できず,断酒の意思がある患者を対象として,断酒後の離脱症状からの回復を待って投与開始する。また,心理社会的治療(集団および個人精神療法,アルコール自助グループへの参加など)を併用する。副作用として下痢,傾眠などが報告されているが重篤なものは少なく,高齢者などにも投与しやすい。
アルコール性身体疾患の背景にはアルコールの有害使用や依存症が存在し,アカンプロサートはアルコール性肝障害をはじめとする臓器障害の治療・管理にも貢献することが期待される。

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