がん対策推進基本計画(2012年策定)の全体目標で,「がんになっても安心して暮らすことのできる社会の構築」をめざすことが新たに明記された。一方,活用できる身近な医療・療養資源に関する情報不足もあり,地域における患者支援と緩和ケアの広がりは十分とは言えない。診療ガイドラインなどの信頼できる情報の作成によって,がんの知識や標準治療に関する情報は整備されつつあるが,地域の療養環境に適した形での情報提供は十分になされていない。今後は,地域ごとに「がん患者の緩和ケアと療養支援」を実現していくことが課題と言える。
医療介護総合確保推進法(14年成立)に基づき,16年半ばをめどに地域医療構想の検討が進められている(文献1)。厚生労働省が提示したガイドラインに基づき,都道府県において25年に向けた医療提供体制の構築に向けて,がんを含めた5疾病および医療計画,そして在宅や介護分野の議論が進められている。
がん対策加速化プラン(15年12月)でも,地域での緩和ケアの情報や教育研修の充実が提言された(文献2)。患者自身に加え,家族向けの情報提供と意思決定支援が重要である。医療・介護・福祉・行政など,幅広い関係者が患者家族の不安や情報不足に対応し,相談体制や在宅療養支援体制を顔の見える関係のもとに構築していく必要がある(文献3)。
1) 厚生労働省:地域医療構想策定ガイドライン. 2015.
2) 厚生労働省:がん対策加速化プラン. 2015.
3) 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト. [http://homecare.umin.jp/]