医療の限界を感じた小児科医である著者が、科学では説明することのできない「生きる」ことの意味を親鸞の教えから説き明かす(駒澤 勝 著、法藏館、2010年刊)
医学教育を受けてきた医師は、科学的合理思考が身について人間の身や心の領域を把握できるという自信のようなものを持っている。それがないと日々の診療活動はできない。進行した悪性腫瘍や難治の患者に関わるとき、医学知識、技術の無力さを実感する。しかし、一時的であっても人間関係を築けた患者が助かって欲しいと思わざるをえない。
人を救う仕事は医療だけではない。仏教は、釈尊以来「生死勤苦の本を抜く」教えとして多くの人を救ってきた。医師は、仏教が人を救うと言っても人間は必ず死ぬではないか、と仏教に懐疑的である。小児科医である著者は患者の死という壁に直面して、悶々とする中で浄土真宗の熱心な信者であった母親の語る仏教を思い起こしたという。
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