株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【私の一冊】『なよたけ』

No.4793 (2016年03月05日発行) P.73

中村重信 (洛和会京都新薬開発支援センター所長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 加藤道夫の処女戯曲。5幕9場は1946年5~10月の「三田文学」に連載発表された。1948年に第1回水上瀧太郎賞を受賞(加藤道夫 著、青土社、2000年刊)

    若き日の清々しい感動を若い人に伝えたい

    『なよたけ』に初めて接したのはこの詩劇を読んだときではなく、高校2年(1955年)の秋、芥川比呂志演出の文学座公演による舞台だった。とても純粋で清々しい感動を覚え、『竹取物語』を数カ月前に読んでいたこともあり、加藤道夫の脚本を買った。その冒頭にはこうあった。

    ─『竹取物語』はこうして生れた。世の中のどんなに偉い学者達が、どんなに精密な考証を楯にこの説を一笑に付そうとしても、作者はただもう執拗に主張し続けるだけなのです。「いえ、竹取物語はこうして生れたのです。そしてその作者は石ノ上文麻呂と云う人です。……」

    加藤道夫が『なよたけ』を書いたのは1943~44年のことだった。この作品を仕上げた後、ニューギニアに派遣され、マラリアと飢餓の中、命からがら帰還した。1946年、「三田文学」に連載し、1951年、尾上菊五郎劇団による『なよたけ抄』として、その一部が上演された。しかし、道夫は1953年に35歳の若さで自死、その2年後に全編が上演された。

    残り298文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top