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B型肝炎ウイルスの再活性化 【免疫力低下時にde novo肝炎が発生する恐れがある】

No.4813 (2016年07月23日発行) P.49

榎本平之 (兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科准教授)

西口修平 (兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科主任教授)

登録日: 2016-07-23

最終更新日: 2016-10-29

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近年,クローズアップされた問題として,B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化が挙げられる。わが国ではHBVの感染歴を有する者が多いが,感染後,HBs抗原が陰性化すればHBVは体内から排除されるものと考えられていた。しかし現在では,一度HBVに感染すると,たとえ血液中から消失しても,肝細胞に残存していることが明らかとなっている。すなわち,HBs抗原の陰性化後もHBVは完全に排除されず,ウイルスの増殖が宿主の強力な免疫力によって抑制されているにすぎない。
したがって,免疫抑制薬の使用や化学療法などによって宿主の免疫力が低下すると,肝内に潜んでいたHBVが再度増殖して血液中に出現し,時に肝障害を引き起こすことがある(de novo肝炎)。
de novo肝炎は時に重症化し,死亡率も高いため,その予防に力点を置いた再活性化に関するガイドラインが制定された(文献1)。予防のポイントとしては,まずHBs抗原を測定し,陰性の場合にはHBc抗体とHBs抗体を測定することである。医療従事者などでHBVワクチンの接種歴を有する場合を除き,通常は「HBs抗原・HBc抗体・HBs抗体がすべて陰性」で初めてHBV感染歴を否定できる点に注意頂きたい。ガイドラインに則りHBVの感染歴を確認し,HBs抗原が陰性であってもHBVの感染歴がある場合には,フローチャートに則った定期的な再活性化のモニタリングが必要である。化学療法や免疫抑制薬の使用は,多くの分野に共通する事項であるので,ぜひご一読頂きたい。

【文献】


1) 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会, 編:B型肝炎治療ガイドライン. 第2.2版. 2016.

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