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【私の一冊】『宇宙からの帰還』

No.4806 (2016年06月04日発行) P.77

片山一朗 (大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座皮膚科学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • 宇宙飛行士へのインタビューをまとめた科学系ノンフィクション。野口聡一氏(宇宙飛行士)は高校3年生のときに本書を読み、宇宙飛行士になる決心をした(立花 隆著、中央公論社、1983年刊)

    どこまで「人類は神の領域に近づく」のかを考えさせられる

    私の専門とするアトピー性皮膚炎での痒みの認知システムや皮膚のバリア機能などを研究していると、原始生物が地球上に現れて以来、ヒトが驚くほど環境に適応して進化してきたかが良くわかるし、皮膚という組織を構成する細胞、器官がまるで神が創造したような精緻さで、お互いに情報交換しながら外界と内界をつなぐ生命活動を営んでいることに驚嘆する。そして、このような器官、組織をiPS細胞やES細胞から創り出せる時代をリアルタイムで経験できることに、大いに感謝している。さらに、ヒトゲノムの全解読に成功した米国の、クレイグ・ベンダーは最近、原始生命体とも呼べる人工細菌の作製に成功している。このような生命科学の驚くような進歩は人が神の領域に近づき、自由に生命体を創り出せる時代になりつつあることを予感させる。

    残り376文字あります

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