膵癌の危険因子を病診で理解する
危険群に対し連携施設で血液検査および腹部超音波(腹部US)検査を介入させる
膵酵素異常,膵管拡張,膵嚢胞を認めた場合は積極的に中核病院に紹介する
膵癌は予後不良の悪性疾患と位置づけられて久しい。国立がん研究センターが発表した最新の統計では,2006~08年に診断された膵癌の5年生存率は男性7.9%,女性7.5%であり,当院が所属する広島県の統計でも,2008年診断症例の5年生存率は8.5%と,調査対象となったがんの中で最も低い1)2)。
2001年以降,ゲムシタビンをはじめとする膵癌化学療法の展開や各種集学的治療法の進歩により,治療成績は改善傾向にあると思われるが,長期予後が期待できる成績に近づくために早期診断は必要不可欠であると考えられる。
当院が所属する広島県尾道市は広島県南東部の瀬戸内海に面した人口約14万人,高齢化率は32.6%と,全国平均を上回る地方都市である(図1)。当院が所属する尾道市医師会は会員数約300人で構成され,中核病院と連携施設が一体となった地域包括ケアシステム(尾道方式)が従来から機能している。
尾道方式では,かかりつけ医を中心として医療・介護・福祉が連携し,利用者が在宅療養できるシステムが多職種協働で構築されており,中核病院等での退院カンファレンス等を通じて在宅での緩和ケア,看取りまで対応する場合が多い。その結果,中核病院と連携施設のスタッフ間の距離は伝統的に非常に近く,良好な病診連携の基盤となってきた。
一方,2005年頃から医師会内の中核病院ではCT,磁気共鳴胆管膵管造影(MR cholangiopancreatography:MRCP)などによる膵疾患に関する画像および内視鏡診断,病理診断技術等が整備された。さらに膵疾患を専門とする医師が複数配置され,膵癌早期診断への取り組みを展開できる気運が高まった。その後,当時医師会長であった片山 壽氏をはじめとする関係者の努力の結果,2007年から本格的に尾道市医師会膵癌早期診断プロジェクト(尾道プロジェクト)が開始された。
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