株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

乳癌検診【がんが発症しやすいかどうかが遺伝的背景から予測できる時代に】

No.4835 (2016年12月24日発行) P.48

山内英子 (聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長)

登録日: 2016-12-21

最終更新日: 2016-12-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

現在,わが国でも乳癌罹患者数は増えてきている。生涯で換算すると,女性の12人に1人が乳癌を経験すると言われている。著名人が乳癌と診断されたと公表されると,女性は急に不安になり,検診に駆け込むことも多く見受けられる。しかしながら,社会に今一度考えてもらいたいと思う。がん検診の目的は,早期に発見・治療をすることで,がんによる死亡を減少することにある。

一方,がん検診の限界や不利益もわかってきている。まず,考えられる不利益は被ばくの問題である。偽陽性による,不必要な検査や精神的な負担も挙げられる。検査に伴う偶発症も少なからず存在する。また,検診を受けた時点で生命予後に直結しないがんを発見する「過剰診断」も挙げられるであろう。検診で「異常あり」と言われたときの受診者の不安は,がんと診断されている患者よりも高いという報告もある1)。有効性の確立した検診を,徹底した精度管理のもと行う,つまり「正しい検診を正しく行う」必要性は言うまでもない。

遺伝医療などの進歩に伴い,がんの発症しやすさなどが遺伝的背景からもわかるようになってきている。2013年に米国の女優が遺伝的背景を鑑みて予防的に乳房を切除したことから,乳癌になりやすい遺伝子があるということが社会にも広まった。疾患になりやすい遺伝背景,体質,生活習慣などを洗い出し,本当の意味での発症予防ができるprecision medicineにより,個々のリスクに応じた個別化検診の時代がすぐそこまできている。

【文献】

1) Kitano A, et al:Int J Clin Oncol. 2015;20(6): 1110-6.

【解説】

山内英子 聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top