No.4836 (2016年12月31日発行) P.14
山岸敬和 (南山大学教授)
登録日: 2016-12-22
最終更新日: 2016-12-26
共和党のドナルド・トランプ氏が11月の大統領選挙で当選を果たした。「先進国で唯一皆保険がない国」と言われてきた米国は2010年3月、バラク・オバマ大統領が推進する「Patient Protection and Affordable Care Act」(通称オバマケア)が成立。選挙中、オバマケアを撤廃すると発言していたトランプ氏の大統領就任で、オバマケアの行方はどうなるのか。米国の政治制度や医療制度の発展を研究する南山大学外国語学部の山岸敬和教授に話を聞いた。
トランプ氏はもともと国民皆保険を支持する発言を過去にしていた。オバマケア反対を強く押し出さないと伝統的な共和党支持を得られないため、選挙戦の中で主張をシフトしていった。いきなりオバマケア賛成に鞍替えはできないので、新政権発足後にオバマケアのRepeal(破棄)が議会で通れば、拒否権は発動しないだろう。
今回、議会の上下両院の過半数と大統領が共和党という統一政府になり、オバマケア破棄には絶好のタイミングだ。ただ共和党の上院での議席は52。トランプ氏がオバマケア廃止法案を提出しても議事妨害(審議を引き延ばし廃案に追い込むこと)を終わらせるには60票が必要なので、オバマケアの全面破棄はできない。
一方、予算調整法案であれば単純過半数の51票で押し切れるので成立可能となる。その場合オバマケアの予算に直接関係する部分しか破棄できないが、それでも個人への政府の財政補助を止めるなど、大きな影響がある。今後、議会がそうした形でオバマケアを破棄し、トランプ氏が賛同の署名をすることはあり得る。
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