大阪府医師会には1万7000人を超える会員がいるが、多くの会員は日常の診療等に追われ、医師会への帰属意識も希薄になりがちである。かつての自分もそうであった。勤務医時代は年間約500件の手術を行ったこともある。平成2年に開業してからも、診療や紹介患者の手術の立ち会いなど、多忙な日々が続いた。
しかし、地域の医師会の理事に就任した平成10年、「大阪府医師会で若手会員を対象とした委員会が始まる。勉強してくるように」と、委員に送り出された。当時の植松治雄会長(現顧問、元日本医師会会長)が、若手会員の意見や考え方を吸収するとともに、医療問題全般にわたる研鑚を深め、将来の医師会を担う人材を育成しようと設置された「医療問題研究委員会」である。
開業医としてある程度のキャリアを積み、地域医療活動にも取り組んでいると自負していた。しかし、講義などを通じて戦後からの医療制度の歩みを学ぶ中で、医師会の立場や役割を改めて認識させられた。「たとえ厳しい状況下でも、こうして診療が継続できるのは、諸先輩が国民医療の充実を求め、政治や行政に訴え続けた歴史があることを忘れてはいけない。医師会があるからこそ、医師としての役割を果たす環境が守られている」──植松元会長からの薫陶を受けて、「国民とともに歩む医師会」にもっと積極的に携わっていこうと誓った。
あれから約20年が経った。植松元会長を質問攻めにしていた同期の松原謙二氏は、日本医師会副会長になった。そして、私も大阪府医師会を預かる立場になり、委員会で学んだことを次世代の後輩達に伝えている。医療費抑制や国による管理医療の動きなど、我々医師、そして医療を取り巻く環境は厳しさを増している。「医師会活動まで頑張る余裕はない」と考える会員もいるかもしれない。しかし、現場にいる我々が医師会の下に団結し、諸課題に立ち向かいながら、社会的共通資本としての医療を守ることは、医師としての社会的な責務である。会員がより深く医師会に関わり、そして、未入会の医師に医師会の必要性を理解してもらえるよう、しっかりと汗をかいて取り組んでいきたい。