「医学博士」と掛けて「足の裏の米粒」と解く謎掛けの作者は不詳である。落語家が大喜利で発表した作品ではあるまい。
その後、専門医志向が高まり、医学博士は足底米粒ではない(取らなくとも気持ち悪くないから、要らない)、とささやかれ始めてからも、既に久しい。ちなみに、学位規則改正に伴い平成3年6月以降は「博士(医学)」になった。
そして最近。大学にも国際競争が押し寄せ、国境を越えて優秀な学生を獲得しようという時代になり、学位の質保証というテーマが浮上している。博士(医学)は、医師にもnon-MDにも授与されてきたから、そもそも多種多様な価値観を包含してきた。医学博士〔博士(医学)〕の肩書きを持つ医師の名刺には、英語面にPhDと書いている場合も、いない場合もある。個人の好み次第である。
では、PhDには国際的に共通の基準のようなものがあるのか、というと、実ははっきりしない。数カ月前のNature誌で、国や大学により、PhDの授与の基準や価値観が相当に異なっていることを知った。
結局、国内外を問わず、どの大学が授与したかにより、医学博士〔博士(医学)〕もPhDも中身は異なる。一方、高い質の学位を取りたいと思う学生もいれば、「とにかく博士(医学)を貰えさえすれば良い」という学生もいる。実際には、どこで授与された学位であろうと、学位の質を決めるのは、個人の研究の内容であろう。翻って、学位を持って良い研究者(あるいは職業学位とみなせば、良い医師)になるかどうかは、学位授与前の研究や努力と、さほどリンクしていない。
大学は学位の質をどこまで保証できるのか。特に医師たちにとって、質保証された学位の先に何が待っているのか。霧の先が見通せない。