「オートファジーの機序に関する発見」に対して2016年ノーベル生理学・医学賞が大隅良典博士に授与された。低迷・混迷期のわが国にとって明るいニュースで、戦後混乱期の1949年、湯川秀樹博士の物理学賞受賞が思い出されて嬉しいことであった。
大隅博士は、単独受賞である。利根川 進博士の受賞(1987年)も単独受賞であったが、業績は海外で行われたもので、大隅博士の業績はメイド・イン・ジャパンである。大隅博士の業績は、国内では既に、学士院賞、朝日賞、京都賞と高い評価を得ている。「オートファジーに関する研究論文」は、大隅博士らの1851を含めて、2万6010。ノーベル賞は遅すぎたとの指摘もある。しかし、蛋白質分解のメカニズムについては、チカノーバー、ハーシュコ、ローズの三博士が、2004年「ユビキチン─プロテアソーム系の発見」に対してノーベル化学賞を授与されているだけに、同一領域での受賞が12年目になったことは、時宜を得たことである。
それにつけても毎年、ノーベル賞の時期になって不思議なことは、カロリンスカ研究所が「今年のノーベル『生理学(または)医学賞』は、……に」と発表した後、NHK、朝日新聞をはじめ、わが国の大抵のマスコミは「医学生理学賞」と報道することである。日経と読売だけが生理学・医学賞である。ノーベルの遺言書(1985年11月27日)には『生理学または医学』と明記してある。
生理学は基礎的研究、医学は臨床的研究である。大隅博士の研究は生理学であり、臨床に役立つとしても100年先のこと、と博士御自身が明言されている。しかし、早くも「オートファジー関連株」の文言が登場していることは「iPS株」と同じことである。
「生理学・医学賞を医学生理学賞と換言」して、ビジネス(利権)化を煽り立てる人達とNHKをはじめとするマスコミの確信的誤訳とは無関係のことではあるまい。