私達医師は、治る見込みがある患者さんは治してさしあげるのが当然と思っています。人にはそれぞれ個人個人に寿命があると思いますが、その寿命を全うさせてあげることが医師の最大の使命と思って治療しています。
麻生さんは「90歳になっているのにまだ生きたいと思っているのか」というような意味のことを言われたそうですが、麻生さん自身も、もう75歳くらいと思われるものの、とても元気で多分90歳まで矍鑠とされているでしょうし、中曽根元首相も一体何歳でしょうか。90歳になってもそれまでと同じように元気なら、もう少し頑張って生きようと思うでしょうね。もうそろそろいい年だから、そろそろ死ぬかなどと言って、自殺する動物は人間以外にいないですよね。
そうだから、自殺企図があるような精神に病気のある人以外は100歳までも生きられるなら生きたいでしょう。
既に100歳以上の高齢者は、やがて7万人に近くなり、中都市の人口に等しくなります。1963年には153人くらいだったのに、です。実際95歳で熱が出たら、風邪かインフルエンザか肺炎という場合が多いのですが、治る病気は治すのが当然ですよね。治るということは、熱の出る前の状態に戻るということです。もともと脳卒中で寝たきりの患者さんが熱が出たとしても、治療により熱は下がっても、寝たきりまで治るわけではありません。
治る病態を治せる医師がいる一方で、状態の悪い患者を治す能力のない医師は、すぐターミナルという言葉でごまかしてしまおうとします。それに家族も納得してしまっている現状があるのでしょう。せめて各人各人の天寿を全うさせてあげなければ、医学の発展は何のためにあるのかということですよね。もう一度立ち止まって考えてみようではありませんか。
日本の寝たきりは世界の中でも特に多いと言われています。治る病気を治さないで、中途半端な治療をする「自称急性期病院」の、リハビリ力のない長い入院期間が原因でしょう。日本慢性期医療協会では、「日本の寝たきりを半分にしよう」を理念に掲げています。そうなれば医療費も少なくなり、介護施設も少なくて済みます。みんなで考えてみようではありませんか。