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乳癌個別化医療の現状と展望 【遺伝子構成を調べ,術式やリスク低減手術の選択に活用。今後の臨床応用の拡大に期待】

No.4839 (2017年01月21日発行) P.54

喜多久美子 (聖路加国際病院乳腺外科)

山内英子 (聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長)

登録日: 2017-01-18

最終更新日: 2017-01-17

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現在,乳癌の治療方針は病期とサブタイプを中心に決定される。一方で,乳癌にはそれらの因子のみでは反映されない多様性があり,個別化医療の重要性が注目されている。

乳癌の個別化医療は,患者もしくはがんの遺伝子構成を調べ,治療に反映させることを基本とする。既にわが国で臨床応用されているものとしては,がん組織の遺伝子状況を調べ,その再発リスク予測をスコアリングし,術後化学療法の適応を決定するツールがある。ただし,その適応は限られた条件下でのみ有用であり,かつ保険診療外であることから普遍的に用いられているわけではない。germline mutationについては,遺伝性乳癌卵巣癌症候群の責任遺伝子であるBRCA1/2変異や,Li-Fraumeni症候群の責任遺伝子であるTP53変異などを血液検査で調べ,乳癌治療の術式やリスク低減手術などの選択へ反映させたり,それらの変異群に有効性が高い可能性がある薬剤を使用するなどの臨床応用がなされている。

個別化医療については数多くの研究が進行中であり,今後も臨床応用の拡大が予想される。近年では,複数の遺伝子検査を安価に施行できるmulti gene panelが身近な存在になってきており,医療施設を介さずにインターネットのみで簡便に検査を受けられる時代を迎えている。誤った解釈や情報に左右されることのないよう,そして患者のより良い治療選択につなげられるよう,医療者も正しい個別化医療の知識をupdateさせていく必要がある。

【解説】

喜多久美子,山内英子 聖路加国際病院乳腺外科 部長・ブレストセンター長

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