日本医師会は8日、記者会見を開き、3月12日施行の改正道路交通法に対応した「かかりつけ医向け認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き」を公表した。診断書の作成を求められた場合の対応や改正道交法の概要などについて解説している。
改正道交法では、75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に臨時認知機能検査で「認知症の恐れがある者」と判定されると、医師による認知症の診断が義務づけられる。認知症の診断を求める高齢者が大幅に増加し、専門医以外も診断する機会が増えると見込まれる。
手引きでは、診断書作成の依頼を受けた場合の対応を「かかりつけの患者」の場合とそうでない場合に分けて提示(図)。「認知機能検査(HDS-R、MMSE)が20点以下であれば、認知症の可能性が高い」などと診断のポイントを解説している。認知症が強く疑われるにもかかわらず、認知機能の低下を強固に否認したり、認知症でないという診断書を強く求めるケースは、専門医療機関の受診方法について「警察に相談する」と記載。患者の要望に応じて、医学的根拠なしに「認知症ではない」という診断書を作成することは、「厳に慎まなければならない」としている。
認知症でないと診断した人が事故を起こし、認知症であったことが判明した場合については「通常、医師の刑事責任が問われることはない」と明記された。このほか、診断書の具体的な記載例も盛り込まれた。
会見で鈴木邦彦常任理事(写真)は、診断書の作成を求められた場合の費用の取り扱いについて「厚生労働省に確認したところ、診断書の発行の費用は通常と同様に患者の自費負担で、診察・検査は保険請求できるという見解だった」と説明。「(かかりつけ医には)無理のない範囲で診断書を書いていただきたい」と呼び掛けた。
なお、日本認知症学会など関係5学会は14日、「認知症高齢者の自動車運転に関する専門医のためのQ&A集」を公表した(内容は次号詳報)。