子宮頸がん検診は問診・視診・内診・子宮頸部細胞診という産婦人科医にとって基本的な手技である。問診や内診も行っているので、子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣囊腫や無月経などの婦人科疾患のチェックも兼ねている。産婦人科のかかりつけ医を持っている女性は少ないので、子宮頸がん検診は婦人科疾患のスクリーニングという役割も担っている。一方、医療制度の異なる欧米では細胞採取のみという場合も多く、産婦人科医が内診も併用しているのは本邦の子宮頸がん検診の特徴とも言える。
Aさんは48歳、前年の細胞診も異常はなく、今年の問診票でも著変はないと記載していた。腟鏡をかけ子宮腟部から細胞を採取しようとしたら、後腟円蓋に透明な帯下が貯留している(写真)。排卵日付近ではなく月経周期と合致しない所見であるが、必ずしも病的とも言えない。子宮腟部と頸管内の細胞を採取し、念のためコルポスコープで観察したが、異常所見はなさそうだ。内診をしながら、子宮頸部“胃型”粘液腺癌(いわゆる悪性腺腫)という病名を思い浮かべた。悪性腺腫は子宮頸部に生じる胃型形質を有する、非常に高分化な粘液性腺癌の一亜型である。頻度は稀であるが、浸潤性に発育し早期に転移や播種をきたし、治療に抵抗性で予後不良である。臨床的には約半数に大量な水様帯下を主訴とするが、病変が内子宮口付近に存在し細胞異型が弱いため,診断は困難とされている。
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